
1.ランドセルの市場規模~2024年はやや縮小するも、10年前と比べて2割増
少子化にも関わらず、これまでランドセル市場は拡大してきた(図1)。この10年間で小学校1年生の人口、つまりランドセルを背負う子どもの数は約14%減っているが(2014年109.1万人→2024年93.万人で▲15.7万人、▲14.3%)、ランドセルの平均価格が約4割上昇しているため(同4.24万円→同5.91万円で+1.67万円、+39.5%)、ランドセル市場規模は拡大している(同462億円→同552億円で+90億円、+19.5%)。
ただし、2024年は、ピーク時の2022・2023年(563億円)と比べてやや縮小し、これまでの拡大傾向から反転した。つまり、これまでは少子化による人口減少の影響に対して、ランドセルの平均価格の上昇効果が上回ってきたことで市場が拡大していたが、少子化による人口減少効果が上回るようになった。今後も、ランドセルの平均価格が直近5年間の上昇率と同程度であれば、市場は緩やかに縮小していくだろう。
2.ランドセル平均価格上昇の背景~6ポケットによる予算拡大効果に「ラン活」が拍車
少子化が進行するなかでランドセルの平均価格が上昇している(市場が拡大している)理由には主に2つの理由があげられる。
1つは、祖父母による購入が過半数を占めて多いことだ。ランドセル工業会「ランドセル購入に関する調査」によると、2024年度の小学1年生の購入したランドセルの支払者は祖父母が54.5%を占める。マーケティング領域では、両親と両祖父母の合計6つの経済ポケットを指す「6ポケット」という言葉がある。
物価高が続くなかでも、ランドセルのような人生に1度きりの記念になるような出費に対しては、1人の子どもに充てられる予算が増える向きもあるだろう。同様の消費としては、ランドセルのほか、七五三や三世代旅行、教育費などがあげられる。
2つ目の理由には、近年、「ラン活」が活発化していることがあげられる。「ラン活」とはランドセルの情報収集から購入までの一連の行動を指すが、インターネットやSNSの普及によって現在では入学の相当前から商品のラインナップや他の家庭の動向を把握することが可能となった。
なお、「ラン活」という言葉は、記事検索によれば2016年頃から新聞記事などで登場するようになっている。あらためて図1を見ると、ランドセルの平均価格が5万円を超え、市場規模は500億円に近づき、市場の成長が目立ってきた時期だ。
ランドセル市場自体は、「ラン活」という言葉が登場する前から拡大傾向にあったが、このような言葉が生まれることで、さらなる活発化を促したのではないだろうか。
このようななかで近年、ランドセルの購入時期は変化している。総務省「家計調査」によると、二人以上世帯「通学用かばん(主にランドセルを含む)」の支出額は、約15年前は入学直前の冬がピークだったが(2006年~2008年平均では1~3月がピーク)、約5年前は前年の夏(2016年~2018年平均では7・8月)に、直近では5月へと前倒ししている。つまり、GWや夏休みの帰省時に祖父母と一緒にランドセルを選ぶ家庭が増えたということなのだろう。
なお、先のランドセル工業会調査では、2024年度の小学1年生のランドセル購入の検討開始時期は2023年4月(入学1年前)と2022年12月にピークがあり、購入する数か月前から検討が開始されている様子がうかがえる。