長年苦労して勤め上げ、安定した年金と貯蓄を手に入れた宮本さん(仮名・72歳)。悠々自適な老後生活を送っていましたが、気づけば毎日同じような退屈な日々。そんな時、友人の誘いに軽い気持ちで応じたことが思わぬ事態へと発展します。今回は「老後を楽しむこと」と「老後資金を守ること」の両立について、CFPの伊藤寛子氏が解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
年金30万円・貯蓄十分・住宅ローン完済で「死ぬまでお金に不安なし」の72歳元会社員が、老後破綻&離婚危機へ転落…友人に誘われた「退屈しのぎ」の果て【CFPの助言】
リタイア後にどんな暮らしをしたいかを考えておくことも大事
妻から離婚をつきつけられた宮本さんですが、離婚後の住まいや暮らし、生活費、子どもや孫との関係を考えると、離婚に踏み切るのは現実的ではありません。宮本さんは妻に心から詫び、二度と競馬をはじめギャンブルには手を出さないことを誓いました。
冷静になってみると、なんでこんなことをしてしまったのかと後悔してもしきれません。競馬にハマってしまったきっかけのひとつである日々の過ごし方も、人と関わり合うことや、人の役に立つようなことをした方がいいのではと思うようになりました。
競馬で使い込んだお金を少しでも取り戻すためにも、シルバー人材センターの仕事ができないかと宮本さんは動き出しました。
今回ご紹介した宮本さんの例のように、リタイアして時間を持て余す中高年層や、ギャンブルが身近にある環境にいる人は、ギャンブル依存になるリスクが高く、特に注意が必要です。
老後に向けて「老後資金不足」が注目されがちですが、「リタイア後にどんな老後生活を過ごしたいか」を考えておくことも大事な備えです。人生100年時代に突入し、健康であればリタイア後の老後生活が長く続くことが想定されます。
現役時代に仕事一筋に働いてきた方ほど、仕事から離れて自分はどんなことがしたいのかを見つめておくことも、充実した老後生活を送るために大事な備えとなるでしょう。
伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー