長年苦労して勤め上げ、安定した年金と貯蓄を手に入れた宮本さん(仮名・72歳)。悠々自適な老後生活を送っていましたが、気づけば毎日同じような退屈な日々。そんな時、友人の誘いに軽い気持ちで応じたことが思わぬ事態へと発展します。今回は「老後を楽しむこと」と「老後資金を守ること」の両立について、CFPの伊藤寛子氏が解説します。

年金30万円・貯蓄十分・住宅ローン完済で「死ぬまでお金に不安なし」の72歳元会社員が、老後破綻&離婚危機へ転落…友人に誘われた「退屈しのぎ」の果て【CFPの助言】
「老後の楽しみ」と「老後資金を守ること」を両立する方法
競馬やパチンコなどのギャンブルを、適度な娯楽の範囲内にとどめて楽しむ分には問題ありません。しかし、負けが続いて抜け出せなくなると、立ち直れなくなる事態に陥ります。適度な楽しみ方を意識して、生活を崩さない範囲で楽しむことが重要です。
月いくらまで、と使う金額の上限を決めて守る、勝ち負けの記録をつけて冷静に振り返る、などの対策をしながら付き合っていくことが大事でしょう。
競馬などのギャンブルは「浪費」とイメージを持たれるかもしれませんが、趣味の範囲内なら「娯楽費」として管理も可能です。「娯楽費」には、旅行や趣味、子どもや孫に使うお金なども含まれます。
年金収入には限りがあります。生活費と万が一に備える予備費を優先し、娯楽費は余裕資金の範囲内で使いましょう。
支出をコントロールして安心して暮らせる家計管理のポイントとして、「3つの財布」に分けて予算配分を決めます。
・生活費:毎月の支出(食費、光熱費、医療費など)
・予備費:突発的な支出への備え(家の修繕、病気、介護費用など)
・娯楽費:旅行・趣味・交際費など
生活に必要な資金と予備費を確保し、残りの余裕資金は娯楽費に。適切な範囲であれば、充実した生活を送るために、「楽しみ資金」として自分の好きなことに使うことができます。
年金は生きている限り受け取ることができる、安定的な収入です。余程の大きな年金制度の変更等がなければ、当面は年金額が大きく変わることもないでしょう。予算配分を決めて、支出額の感覚を掴んでおけば、比較的お金の管理とコントロールがしやすいはずです。
年金生活者は収入が限られていることから、どこまでお金を使っていいのか心配で使えない、という人もいるかと思います。ですが、せっかく築いた資産を使わずに貯めたまま寿命を迎えるのは、もったいなくもあります。
だからこそ、長期的な視点でライフプランを作ることにより老後の資金計画を立て、現在の家計の予算管理をすることで、より自分たちが好きなことに「楽しみ資金」としてお金を使っていけるようになります。