人生の転換期と呼べるときは何回かありますが、定年はそのひとつ。サラリーマンに終止符を打ち、「起業」という夢に挑む人も増加傾向だといいます。しかし、現実はそれほど甘くないことは想像に難くありません。
もう限界だ…「退職金2,200万円」60歳定年サラリーマンが一念発起「キッチンカー」開業も、わずか8ヵ月で「赤字500万円」突破の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

念願のキッチンカー開業。完璧に思えた事業計画だったが…

福田さんが目を付けたのは、サラリーマン時代、毎日のランチでも利用していたというキッチンカー。開業資金の相場は300万~500万円程度。こだわりのコーヒーと、ボリュームたっぷりのサンドイッチで挑戦するといいます。

 

過疎化や高齢化などによる諸問題の解決策としても、今後のさらなる成長が期待される「移動販売(キッチンカー)」。コロナ禍に密を避けたい時代のニーズも獲得し、堅調に成長を続けています。福田さん、目の付け所としては悪くないという自信がありました。

 

【キッチンカー利用についてアンケート】

■利用頻度

月1未満…16.5%

月2、3回…3.2%

週1回…1.1%

週2、3回…0.4%

ほぼ毎日…0.5%

■利用分野

軽食を販売するフードトラック…24.2%

たこ焼き等の一品料理を販売するフードトラック…28.0%

ランチボックス等を販売するフードトラック…9.7%

移動スーパー…5.7%

■移動販売の利用にかける金額

500円未満…37.3%

500~1,000円未満…47.3%

1,000円~1,500円未満…9.3%

1,500~2,000円未満…4.0%

2,000円以上…1.9%

※出所:独立行政法人中小企業基盤整備機構『20代以上の男女1,000人の消費者に対するアンケート』

 

福田さんいわく、「事業計画は完ぺきだった」といいますが、そんなに甘い世界ではなかったようです。キッチンカーの人気が高まるなかで、他の業者との競争が厳しくなっています。特に都市部では同じエリアに複数のキッチンカーが出店することも多く、差別化が求められました。ランチ時に美味しいコーヒーとこだわりのサンドイッチは、数々のキッチンカーがしのぎを削る都心部では没個性。またランチ時に行列ができているような好立地には出店の余地はなく、隙間を狙うような場所で出店交渉。出店が認められても客足は鈍く……1日の売上は最低でも4万円を見込んでいましたが、1万円に満たないこともしばしば。何よりも、長時間の立ち仕事や移動を伴うため、体力的な負担が大きく、サラリーマン時代、デスクワークが中心だった福田さんにはキツイものでした。

 

ランニングコストは月65万円程度かかるなか、毎月50万円以上の赤字を垂れ流す日々。結局、開業から8ヵ月で赤字は500万円に達したとき、体力的にも精神的にも経済的にも「もう限界だ!」と、廃業の決断に至ったといいます。

 

――私の挑戦は1年も持ちませんでしたが、諦めたわけではありません

 

奥さんも呆れているといいますが、別のカタチで起業に挑戦できないか、模索を続けているといいます。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』

独立行政法人中小企業基盤整備機構『20代以上の男女1,000人の消費者に対するアンケート』