
8時45分、いつも通り会社に到着すると…
出社時間は、毎日8時45分。ボロボロになりつつも、気持ちを切り替えるために元気よく挨拶するのが村上さんのモットー。しかし、その日の朝は騒々しい社内に挨拶をすることを忘れてしまったといいます。
どうも様子がおかしい……近くにいた同僚に話しかけると、動揺した様子で「会社が倒産したらしい」とポツリ。「何かの間違いでは?」と思い、オフィスに入ると物が散乱し、空き巣でも入ったよう。ほかの同僚がいうには、重要な書類のファイルがいくつか消えているといいます。騒然とするなか、村上さん、「うっ、嘘だろ……」というのが精いっぱいだったといいます
その直後に行われた朝礼で、会社が倒産したこと、全員解雇となることが告げられました。「なぜ倒産したのか」「これからどうすればいいのか」「給料は支払われるのか」……社員から次々と質問が飛び交いますが、経営陣の姿はなく、現時点、自身も倒産の事実しか知らされていないと繰り返す上司の姿がありました。その後、資金繰りの悪化による倒産であることが判明。経営陣は最後まで姿をみせなかったといいます。
労働基準法第20条によると、会社は労働者を解雇する場合、30日以上前に予告をしなければなりません。また、労働者に対する未払給料の支払いは取引先など他の債権者への支払いより優先されるべきとされています。しかし実際には、会社の財産状況によっては、全額支払われないこともあるようです。
突然、職を失い、騒然とする従業員たち。もちろん村上さんも同様です。
――ローンは残っているし、これから子どもの教育費もかかってくる……まさに青天の霹靂です。ただ途方に暮れている暇なんてありません。とりあえず、新しい仕事を探そうと、その日のうちに転職サイトに登録して、仕事探しを始めました
幸い、村上さんは転職活動1ヵ月半ほどで、新しい仕事を見つけることができたそう。ただ年収は10%ほどダウンしてしまったとか。
――無理してローンを組んでいたら、もっと窮地に追い込まれていたでしょうね。とにかく、あの慌ただしい日々を振り返ると、経営陣には怒りしかありません
帝国データバンクによると、2024年の企業倒産件数は9,901件に達し、そのうち破産は9,271件。9,000件を上回るのは11年ぶりだといいます。2025年も緩やかに倒産件数は増加する見込みだとか。
村上さん、今回の倒産騒動で、毎朝の通勤地獄という当たり前が幸せなことだったと痛感したとのこと。唯一、転職により通勤時間が80分から65分と15分ほど短縮したことはよかったと、笑顔で話してくれました。
[参考資料]