生命保険において、自ら情報を収集する主体的な顧客である「能動的加入者」と、そうでない「受動的加入者」では、それぞれ満足度などにどういった差が出るだろうか。生命保険となると若年層にとっては保障ニーズの見極めが難しく、教育の重要性などが指摘されている。本稿では、ニッセイ基礎研究所の村松容子氏が、保険選保障ニーズを知ることの重要性について解説する。
生命保険「能動的加入者」の視点から、保障ニーズを知ることの意義 (写真はイメージです/PIXTA)

生命保険加入行動の変化

自ら調べた情報をもとに会社や商品を比較・検討して、加入する消費者の増加

近年、金融・保険取引の中で「自ら調べた情報をもとに会社や商品を比較・検討し、加入する消費者」が増加してきている。

 

ニッセイ基礎研究所では、生命保険の購買行動を観察する中で、2000年頃から、営業職員から勧められるまま加入するのではなく、自らパンフレットやインターネットの情報をもとに検討を進めるといった能動的な加入者が増えてきていることを確認し、従来の加入者(「受動的加入者/顧客」と呼ぶ。)と区別して、「能動的加入者/顧客」と呼んできた*
*栗林敦子・井上智紀・村松容子「金融マーケティングにおけるセグメンテーション -生保加入時の能動的行動に注目して-」2009年3月25日ニッセイ基礎研究所 所報(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/38114_ext_18_0.pdf?site=nli

 

また、この能動的加入者には、加入する商品を検討する過程で、インターネットで保険会社のホームページや保険比較サイトを調べる、FPに相談する、書籍や雑誌記事を参考にする等、自分で情報を得て加入する保険を絞り込んでいけるタイプ(「真性能動的加入者」と呼ぶ。)と、生命保険の加入動機を持ち、自分で情報を得るが、加入する商品を検討する過程では商品間の差がわからず、どの保険会社のどの商品が自分にふさわしいか、絞り込むことができないタイプ(「疑似能動的加入者」と呼ぶ。)の2種類があることが観察された。

 

能動的加入者の増加は、インターネットの普及により金融機関や金融商品の選択時に必要な情報を集める環境が整ったことや、高齢期に向けて自助努力による資産形成の必要性が高まり金融商品・サービスの消費経験を積んだ人口が増加したことなどがその主な理由と考えられたことから、さらに増加することが見込まれ、その動向に注目してきた。

 

本稿では、現在の能動的加入者、および真性・疑似能動的加入者のボリュームを確認し、その特徴を紹介したうえで、今後のより納得できる生命保険加入における示唆を得たい。

 

 定量調査における「能動的加入者」「受動的加入者」の定義

定量調査における「能動(真性能動、疑似能動)」と「受動」の定義は以下のとおりとした。

 

まず、「能動的加入者」は、生命保険加入時に自ら情報を収集し、会社や商品を比較検討を行うため、以下の条件I、IIのいずれかに該当するケースを「能動的加入者」とし、それ以外を「受動的加入者」とした。

 

I.他社比較・検討の有無

2つ以上の保険会社の生命保険について比較検討した人


II.主体的な情報探索の有無

加入時に利用した情報源として、自ら収集した情報を利用した人

 

次に、「真性能動的加入者」と「擬似能動的加入者」の違いは、自分に必要な保険ニーズをいくつかの情報に照らしあわせ、徐々に絞り込むことができるかどうか(自分で保険を選択・決定できるかどうか)にある。そのためにはまず、自分のニーズに関する知識が必要であると考えられる。そこで、下記のIIIの条件によって「真性能動的加入者」と「擬似能動的加入者」を分類した。

 

III.自分自身のニーズに関する知識の有無

 

「自分の保障ニーズ」について「よく知っている」から「まったく知らない・用語がわから ない」まで5段階で聞いているが、これに対して「よく知っている」と回答した人を「真性能動的加入者」、「少し知っている」「どちらともいえない」「ほとんど知らない」「まったく知 らない・用語がわからない」と回答した人を「擬似能動的加入者」とした。

 

各セグメントの特徴、および定量調査における定義の根拠等については、前述の「金融マーケティングにおけるセグメンテーション-生保加入時の能動的行動に注目して-」をご参照いただきたい。