2015年に持続可能な開発目標として採択されたSDGs。実は地方創生とSDGsは政策面で密接に関連しており、自治体の8割がSDGsを推進しているという。そんななか、サステナビリティに対する関心や理解度はどれほど高くなっているのだろうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所の小口裕氏が、SDGsと地方創生の現在地と課題について解説する。
地方創生2.0とサステナビリティ…地方創生SDGs推進に向けて重要度が高まる「データ利活用」 (写真はイメージです/PIXTA)

地方自治体のSDGsの取り組み状況(2)

「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」の現状~2024年度まで37都道府県206都市が選定

地方自治体の地方創生SDGsを推進するための政策支援として、2018年度から「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」が実施されている。この事業は、内閣府のSDGs推進本部が、SDGsの理念に沿った取り組みを推進するポテンシャルが高い都市・地域を「SDGs未来都市」として選定するもので、その中から特に先導的な事業を「自治体SDGsモデル事業*1」として、予算措置*2を行っている。

 

*1 これまで2024年度分までの累計で、37都道府県、206都市が選定されている。
*2 自治体SDGs推進事業費補助金は、自治体SDGsモデル事業に選定自治体に交付される。補助額は、機械装置調達やシステム導入・人材育成等で2,000万円(定率補助1/2)、全体マネジメント等で2,000万円(定額補助1/2)、合計4,000万円があてられており、内閣府地方創生推進交付金、国土交通省社会資本整備総合交付金、環境省再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業が活用されている。

 

この制度自体は、2008年に開始された「環境モデル都市*1」、2011年からの「環境未来都市*2」を発展させた位置づけとなっているが、SDGsの理念に沿った基本的・総合的取り組みを推進しようとする都市・地域から、特に環境面のみならず、経済・社会を含む「三側面」で新しい価値創出と持続可能な開発を目指す都市が「未来都市」として選定されている点が特徴となっている。

 

*1 2008年1月に福田内閣下の地域活性化統合本部会合で了承された「都市と暮らしの発展プラン」の中で「地球環境問題への対応」として、具体化された取り組み。持続可能性、快適性、安全性を備えた低炭素型都市を目指すモデル都市を選定するもの。
*2 2010年6月に菅直人内閣下で閣議決定された「新成長戦略」における戦略プロジェクトの一つとして「環境・超高齢化対応等に向けた、人間中心の新たな価値を創造する都市」の実現を基本コンセプトに進められた取り組み。

 

選定計画にみられる特徴~「地域資源」「独自のポジショニング」「自律的好循環の達成」

SDGs未来都市に選定された市区町村の事業計画の特徴は、地域の歴史的経緯や立地条件を踏まえたマテリアリティ(優先的に取り組む目標)が設定されている点であろう。

 

たとえば都市部の自治体は、先進技術(IoT、スマートシティ)を活用し、国際的なモデル都市の構築を目指す計画、多文化共生や持続可能な交通ネットワークの整備も目指す計画なども見られるが、その一方で、地方都市・中山間地域の自治体には「地域資源」「自然環境」「観光資源」活用を通じて、地域独自の持続可能性を追求する計画がみられており、その自治体独自のポジショニングと地域資源を存分に活かした計画が優先・評価されている様子が伺える。

 

また、未来都市の選定にあたって、SDGsを単なる地域活性化の題目としてのみ捉えるのではなく、経済活性化や投資対効果を踏まえて「自律的好循環」を達成することにも目を配った実践的・具体的な計画が評価・選定されている点も特徴的である。