2024年12月の消費者物価、全国コアCPIは前年比で3.0%上昇。1年4ヵ月ぶりの高水準を記録しました。終わりの見えないインフレに、「当初のシミュレーションが大幅に狂った!」という場面に遭遇した、という人も多いのでは。それは高齢者の住まいの選択肢として存在感が増している「老人ホーム」でも。
金が足りない、すまん、貸してくれ!〈年金月22万円・79歳父〉がまさかの懇請。〈45歳長男〉が思わず二度聞きする「驚愕の老人ホーム請求額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

あの父が子どもに頭を下げるなんて…プライドを捨てるしかない「老人ホーム費用の値上げ」

本当に人と生活できるのか……そんな心配があったものの、老人ホームでの暮らしは楽しい様子。そんな父にすっかりと胸をなで下ろしていました。

 

ところがそんな状況が変わったのが、つい最近のこと。誠さんから珍しく電話。そこで開口一番、「お金が足りない」と悲鳴。そして「すまないがお金を貸してほしい」と頼んできたのです。

 

まずは「子どもに頭を下げるなんて」と驚いた直樹さん。そのうえで、「なぜお金が足りないのか」と訝しく思ったといいます。理由を聞くと、この物価高のなか、ホームの月額費用も値上げ。このままではお金が足りなくなる。だから援助してほしい……というものでした。

 

確かに、ホームの月額費用は17万円。金銭的に無理のないホームを選んだ印象がありました。

 

――で、今は月々いくらなのさ

――月22万5,000円

 

思わず「えっ⁉」と二度聞きしてしまったという直樹さん。3年前と比べて5万円以上も高くなっています。実は入居後、毎年15%ほど値上げ。光熱費、食費、人件費、あらゆるものの値段が上昇。価格据え置きではとても施設を運営できず、ぜひとも協力を……ホームからの説明です。入居時から月5万円以上も費用が膨らみ、当初のシミュレーションではお金が底をついてしまう。そんな恐れから直樹さんに頭を下げることにしたというのです。

 

TRデータテクノロジーによると、2023年8月時点で月額費用の値上げを行った法人は全体の26%に達し、管理費の平均値上げ額は7,570円(値上げ率は21.5%)、食費は4,810円(10.1%)となっています。

 

誠さんは直樹さんに値上げ分の月5.5万円分の面倒をみてくれないかといいます。住宅ローンの返済を抱え、これからは子どもの教育費も増えていくでしょう。そんなタイミングで、思いもしなかった父親からの懇請。断れば、誠さんはホームを退去せざるを得なくなり、別の心配が増えるでしょう。難しい判断のためすぐには回答できず、とりあえず、家族会議を開くことになったといいます。

 

[参考資料]

国土交通省 第8回サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会資料『サービス付き高齢者向け住宅に関する現状と施策の動向』

株式会社TRデータテクノロジー『有料老人ホーム等の月額管理費・食費改定の現状調査』