定年後も働くことを考えている人は多いでしょう。働き方によっては、年金の受給額が変わることをご存じでしょうか? 在職老齢年金制度は、働き方次第で年金額が変動する仕組みです。本記事ではAさんの事例とともに、本制度の注意点について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
定年後は一瞬無職「社会から取り残されたよう」→ たまらず再就職の65歳元大手部長、ただならぬ努力で“年金月18万円と月収40万円”現役時代の収入キープも…厚労省に奪われた「働く意欲」【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんが選んだ「新しい働き方」 

年金の支給額変更通知を受け、一時は働き続ける意欲を失ったAさん。しかし、自分の経験を活かして社会とつながり続けたいという思いから、冷静に自分の働き方を見直し、次のような工夫をすることで「年金を減額されずに働く方法」を見つけました。 

 

収入を調整するために勤務日数を減らす 

Aさんは、現在の週4日勤務から週3日勤務に切り替えることで、月給を40万円から30万円に調整しました。この変更により、以下のように在職老齢年金の支給停止額を抑えることができました。 

 

《変更後の計算 》

給与(月給):30万円 

老齢厚生年金の基本月額:12万円 

総報酬月額相当額+年金の合計:30万円(給与)+12万円(年金)=42万円 

 

この結果、総報酬月額相当額+年金の合計が支給停止調整額(50万円)を下回るため、老齢厚生年金が全額支給されることになりました。 

 

Aさんは今回の経験を通じて、「制度を知らなかったこと」が年金の削減という思わぬ事態につながったことを痛感しました。年金制度を理解したうえで計画的に行動することの重要性を強く実感したと話します。 

年金を減額されることなく働くためのポイント、4つ

1.制度を事前に理解する 

在職老齢年金の基本ルールを学び、年金が減額・停止される条件を把握することが大切です。具体的には、支給停止調整額や計算方法を確認しましょう。 

 

2.収入ラインを意識する 

働くことで年金が減額される場合、収入を調整することでバランスを保つことが可能です。たとえば勤務日数や給与額を調整することで、無駄なく収入を確保できます。 

 

3.専門家に相談する 

年金制度は複雑なため、自分だけで判断するのが難しい場合があります。ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士、年金事務所の職員に相談することで、最適な働き方を見つけやすくなります。 

 

4.将来の計画を立てる 

年金だけに頼らず、資産運用や貯蓄も併せて計画することで、安定した老後を迎える準備ができます。

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表