ギャンブルとは無縁で、堅実な性格だった高野さん。しかし、ふとしたきっかけで競馬に手を出し、ビギナーズラックで大儲け。気づいたら、取り返しのつかない借金地獄に陥ってしまいました……。ルポライターである増田明利氏の著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、「借金地獄」に陥った男性の実例をみていきましょう。

アパートから追い出されました…月収32万円“質素で堅実”だった33歳・都内在住の男性が「借金地獄」に陥ったまさかの理由【ルポ】
「質素で堅実」な性格だった高野さんが犯した“たった一度”のあやまち
高野厚志(33歳)
出身地/山梨県
現住所/東京都足立区
職業/会社員
収入/月収32万円
家賃/4万7000円
主な借金/消費者金融4社140万円、クレジットカードキャッシング枠30万円、デパートカードキャッシング枠30万円、銀行カードローン80万円、延滞利息など合計300万円
借金の残高/某銀行のおまとめローンに1本化し300万円+利息
月々の返済額/元利合計で12万円
「土曜、日曜にテレビやラジオ、スポーツ新聞などに触れないようにしようと思いまして。それなら短時間のアルバイトでもやってみようかと思ったわけです。働けばお金になるしそのお金で借金も返せますからね」
2018年1月からの1年5ヵ月の間で完全に休んだのは、食あたりで下痢と嘔吐が止まらなかった3日間だけで、大晦日も元旦も働いていたという高野さん。こうなったのは競馬にのめり込み、あちこちに借金を作ってしまったからだ。
「多額の借金を抱えている自分が言うのは憚られますが、社会人3年目頃までは地味に、質素にやっていたのですよ」
最初は“節度を持った推理ゲーム”の感覚だった
ギャンブルとは無縁でパチンコ、パチスロなどもやったことがない。麻雀は打ち方もルールも知らないほどだった。そんな堅実な性格だったのに、付き合いで嫌々やった初めてのレースで25倍超の高額配当を手にしたことで競馬中毒になってしまった。2年足らずの間に作った借金はざっと280万円。改めてギャンブルは怖いと思う。
「どういうわけか自分の部署の同僚や上司に競馬好きな人が多くいて、騎手のファンだという理由でたまに馬券を買っている女子社員もいました。自分は興味も関心もなく、周りの人たちの話に適当に相槌を打ったりしてました。はっきり言うと、馬鹿じゃないかと思っていた」
先輩社員に「お前も一丁どうだ」と誘われて初めて買ったのが14年3月の高松宮記念。本命、対抗なんて分からないから適当な数字の馬連馬券を買ったのだが、これがまさかの的中で2,860円という高配当だった。