ギャンブルとは無縁で、堅実な性格だった高野さん。しかし、ふとしたきっかけで競馬に手を出し、ビギナーズラックで大儲け。気づいたら、取り返しのつかない借金地獄に陥ってしまいました……。ルポライターである増田明利氏の著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、「借金地獄」に陥った男性の実例をみていきましょう。

アパートから追い出されました…月収32万円“質素で堅実”だった33歳・都内在住の男性が「借金地獄」に陥ったまさかの理由【ルポ】
高配当馬券を“当ててしまった”高野さんのその後
「1,000円買ったので配当は2万8,600円。これですっかりギャンブラー扱いされました。大きなレースの前になるとスポーツ新聞片手に、お前はどれを買うんだとか要注意はどの馬だなんて聞いてくるんです。こっちはまったく分からないから住んでいるアパートが3階の7号室なので3-7とか、実家の住所が6丁目13番地だったので馬連で6-13なんて適当に話していたんです」
こんないい加減な予想なのに3回に1回くらいの割合で的中し、15~20倍の高配当がついた。儲かった先輩からお昼に鰻を奢ってもらったこともある。
「こんな簡単に儲けられるのなら自分でやったらいいじゃんと思っちゃうわけです。中央競馬会のCMなんか若い人気俳優を起用したりしていて、競馬=ギャンブルという印象も薄くなっていたし。節度を持って推理ゲームをするという感覚で自分も馬券を買うようになってしまいました」
当初はやっても月に1、2回。馬券は1レース500円までというようにブレーキが利いていた。ひとつのレースで買うのは100円の馬券を3~5通り。全部外れることもあったが、たまに当たって6、7倍の配当。こんな感じで遊びの範疇だった。
1万円が45万円に…たがが外れ、遊びが遊びでなくなった
たがが外れたのは15年5月のヴィクトリアマイル。この日はついていて新馬戦から始めて4R、5R、7R、9Rとすべて当てていた。どのレースも複数の馬券を買っていたが、当たった馬券の配当が10倍、15倍ということもあって収支は大きなプラスだった。
「3万円と少々の小銭を持って家を出たのですが、9Rが終わったときは10万円以上になっていました」
なぜだか気分が大きくなり、儲けた金から5万円を分散してメインレースに投入してしまった。
「専門紙に波乱があるとすればこれという組み合わせが出ていて。面白そうだと思いその馬券を1万円買ったんです。それが来ちゃいましてね」
馬連で買った当たり馬券の配当が4,510円。1万円分注ぎ込んだから手にしたお金は約45万円。もう舞い上がってしまった。
「最終の12Rに買った数通りの馬券にも当たりがあったので、競馬場を出たときには財布の中に50万円あまりの現金が入っていた。もう家までタクシーで帰りましたよ」