通常、「無理なく返済できる住宅ローン」の目安は、返済比率(年間返済額÷年収×100)20~25%とされています。しかし「20%未満なら絶対に大丈夫か」というと、どうもそうとはいえないようです。ルポライターである増田明利氏著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、住宅ローンを借りて“夢のマイホーム”を手に入れた男性の実例をみていきましょう。

もう、無理だ…月収45万円のサラリーマン〈1,600万円の住宅ローン〉で埼玉県・草加駅近くにマイホームを購入「すべてが順調」だったが…6年後に発覚した“まさかの事実”に悲鳴【実話】
29歳で結婚→40歳でマイホーム…“順調な人生”のはずだった
金澤将弘(50歳)
出身地/富山県
現住所/東京都北区
職業/会社員
収入/月収38万円(手取り32万円)
家賃/9万8,000円
主な借金/住宅ローン1,600万円、クレジットカードキャッシング25万円
借金の残高/住宅ローンは住まいを売却して清算、クレジットカードキャッシング20万円
月々の返済額/クレジットカードキャッシング8,000円
「引き渡しは来月の20日なのですが、出ていくことに決まったら1日でも早い方がいいでしょ。妻と子どもたちはもう新しいアパートに移っていまして、週末ごとに少しずつ荷物を運んでいるところです」
あと2週間でマイホームから退去しなければならない。その後はここを買った新しい住人が入居してくる。
「ここに来たのは2009年の年初だったから、10年ほどしか住まなかったんだな」
買う前の目論見では、今頃はローンの半分は返せていると思っていたが現実は真逆だった。もう住宅ローンを返すのが限界になって手放すのだから。
情報処理・システム設計会社に勤める金澤さんが結婚したのは29歳のとき。最初の住まいは民間の賃貸アパートだった。長男が生まれたのを機にURの賃貸に移ったのが31歳。その後に長女も生まれ、40歳で念願のマイホームを手にした。
「自分の家を持つというのは夢でしたよ」
金澤さんは富山県の出身、持ち家比率が日本で一番高いところだ。結婚して4、5年したら持ち家が当たり前という感じで、金澤さんの長兄も嫁いだ姉のところも結婚して数年で家を手に入れていた。
「自分も早く家を持ちたいと思っていたのですが、都内や神奈川で交通の便が良いところだとなかなか手が出せませんよ」
バブルが崩壊して不動産価格は下がり続けていると言われていたが、23区だと中古のファミリータイプのマンションでも2,500~3,800万円ぐらいが最大のボリュームゾーン。中古の戸建てになると最低でも4,000万円は必要だった。
「駅のラックに置いてあるフリーペーパーの住宅情報誌は毎号見ていました、研究のために。いろいろ比較してみると鉄道の路線によってかなり値段が違うんですよね。賃貸でも家賃は大きく違っていて、東急線や小田急線沿線だと12万円ぐらいする2DKのマンションも埼玉県に入ったら8万円で借りられる」