通常、「無理なく返済できる住宅ローン」の目安は、返済比率(年間返済額÷年収×100)20~25%とされています。しかし「20%未満なら絶対に大丈夫か」というと、どうもそうとはいえないようです。ルポライターである増田明利氏著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、住宅ローンを借りて“夢のマイホーム”を手に入れた男性の実例をみていきましょう。
(※写真はイメージです/PIXTA)
もう、無理だ…月収45万円のサラリーマン〈1,600万円の住宅ローン〉で埼玉県・草加駅近くにマイホームを購入「すべてが順調」だったが…6年後に発覚した“まさかの事実”に悲鳴【実話】
マンションが売れた!しかし…
売却依頼は数件の不動産屋に依頼し、約3ヵ月後に買い手が付いた。
「2,200万円で買ったものだけど、売るとなったら1,880万円でした。買ったときで築5年、10年住んでいたから築15年ということになっているので仕方ありません」
不動産業者は、近くに新築物件が建ったらもっと下げなければ売れない、今が売り時だと言っていたが、金澤さんにはその言葉が寒々しく響いた。売却代金から仲介手数料などの諸経費を引くと残ったのは1,700万円ほど。
「ローンの残りは利息込みで約820万円。差し引き880万円が残ったお金です。転居するアパートの初期費用と引っ越し代、粗大ゴミの処分で40万円ほど使ったけど、残ったのは銀行の定期預金に入れて手を付けないようにしました」
マンションで暮らしていたのは10年4ヵ月。ローンと維持費で払った総額は1,289万6,000円。買わずにURの団地にいたら同じ期間で払う家賃の総額は1,339万2,000円。差額は50万円にもならない。こう考えると馬鹿らしくなってくる。
「わたしの場合、頭金を27%ぐらい入れたのに最後はこれですからね。不動産の広告では頭金10%、残りはローン可というのを目にするけど、そんなことやったら確実に破綻すると思う。マイホームを持とうと考えている人は注意しないと危険ですね」
借りられる額が返せる額とは必ずしも限らない。どういう収入の変動があってもこれぐらいなら返せるだろうと思う金額しか借りないのが安全な策。これは肝に銘じておいた方がいい。
増田 明利
ルポライター