雪崩式に起きた“まさかの出来事”で窮地に

ローンの支払いに苦しむことはないと思っていたが、15年の下期過ぎから様相が一変する。

「まず、妻が体調を崩してしまいまして」

奥さんは15年の春頃から腰が痛い、足が痛い、太ももの裏側がピリピリすると言い出し、近所の整形外科を受診した。

坐骨神経痛という診断で湿布と痛み止めの内服薬を服用していたが良くなるどころか症状が悪化。都内の大学病院へ紹介状を書いてもらい、検査入院して詳しく調べてもらったら脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)という病気で、脊椎すべり症の所見もあるという診断だった。

「痛みと痺れを抑えるために神経根ブロックという治療をやってもらったのですが効果がなくて。本人もこんなに痛いのは辛いということで手術に踏み切ったわけです」

結果、痛みは通常生活の範囲ではほとんど感じないまで良くなったが、左足先の痺れは前より少し楽というところまでしか回復しなかった。仕事は2ヵ月休職したが、復帰することはできず、もう1ヵ月延長してもらったがやはり難しかった。

「妻は販売職限定の契約社員なので、体調が悪くなっても担当職種の変更はできないと言われたそうです。そんなわけで契約期間中は在籍扱いだったけど、1年間の雇用契約が切れた段階で雇い止めということになってしまいました」

これで奥さんの月収16万円、年収230万円が消失したことになる。

景気回復で会社が大量採用した結果…残業できず年収が激減

そして、更なる予想外の事態が金澤さんの家計を圧迫した。

翌年からは、わたしの収入がドッと下がりました。リーマンショックがあってからずっと人を採っていなかったのですが、景気回復と技術者不足で大量採用するようになりました。大学、高専、専門学校の新卒だけでなく、実務経験のあるキャリア採用も実施したので一気に人が増えた。これが収入減の原因です」

早い話、残業時間が急減したことによる減収だった。

「以前は毎月70~90時間の時間外労働があったんです。平日残業が50時間以上で土日も月3回休日出勤することがあった。それが半分以下になって」

それまでは仕事が過密状態でピリピリしていた職場だったが、人員増で余裕が出てきた。過労で体調を崩す人もいなくなった。良いことのように思えるものの、残業代が減ったのは大打撃だった。

「以前は月平均で80時間ほど時間外労働していました。残業代にすると18万円近くです。これが30時間ぐらいに減ったから残業代も6万7,000円ぐらいになってしまいました。終電ギリギリまで働くことはなくなったし、土日祝日はきっちり休めるから良いことなのですが懐がね」

更に2018年の初めからは働き方改革の余波で一段と残業が減っている。

「水曜日はノー残業デーで18時になるとすべての部屋の照明が落とされ、残業する場合は上司になぜ残業をするのか報告し、了承を得ないと駄目なんです」

終業時刻の17時45分になると社内のスピーカーからオフコースの「さよなら」が流れ、「とっとと帰ってくれ」と追い立てられる。

チーム長の金澤さんは同じ作業班の人たちに「早く切り上げろ」と指導する立場。部下や後輩を帰して自分が残業することなどできないから終業チャイムが鳴ったら、いの一番で退勤するしかない。

「先月の残業代は9時間で2万2,000円程度でした。3年前の残業代は月17~18万円だったから15~16万円の月収ダウンということです。こんなわけで年収が180万円以上も減っているんです。こんなことは想定外でした」

基本給とそれに連動する給与調整金は増えているが、残業代が大幅に減ったことで年収は2年続けて大幅に落ちている。

はっきり言っちゃうと、マンションを買った年の年収より下がっています。社会保険の負担分が増え続けているから本当に苦しい」