多くのビジネスパーソンが「人間関係」に悩みを抱えています。相手のためを思った行動が裏目に出たり、自分の真意が相手に伝わらなかったりと、ままならないことも多いでしょう。良好な人間関係を構築するためには、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。そこで本記事では、山本洋子氏の著書『なぜあの人は初対面で信用されるのか 元JAL国際線チーフパーサーだけが知っている、人の心をつかむ極意』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集し、良好な人間関係を築くコツについて解説します。
悩む部下に「私も同じ経験をしたから」と無意識に価値観を押し付けていませんか?…会社の人間関係を円滑にするシンプルな方法【元JAL国際線チーフパーサーの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

相手を知り、自分の価値観を手離すことからすべてが始まる

ビジネスパーソンの悩みの中で、一番多いと言われるのが人間関係にまつわる悩みです。人間関係の難しさは、自分の真意が相手に伝わらない、自分は誠心誠意相手に対応しているのにわかってもらえないというようなジレンマがあることです。

 

人間は自分勝手な生き物ですので、承認欲求があります。自分の主張が通らないときや認められないときは、少なからずネガティブな感情を持ってしまうものです。

 

しかし、ビジネスシーンにおいて、自分の主張ばかりを通そうとすると、人間関係はうまくいきません。ビジネスシーンにおいては、自分を知ってもらう前に、まず「相手を知る」ことから始めることです。

 

最初に自分のことを知ってもらった相手は、次はあなたを知りたいと思うもの。人間の心理を理解していれば簡単なことですが、これがなかなかままならないのです。「相手を知る」ことで重要なのは、答えを持たずに相手の話を聴くことです。

 

例えば、部下があなたに仕事の悩みを相談しにきたとします。その悩みは、上司であるあなたも過去に経験したことでもあり、解決策も持っています。自分も通ってきた道ですので、部下の気持ちもよく理解できます。

 

そんな状況で、あなたは部下の相談をどんな態度で聴いてあげるでしょうか? 部下が話し始めたと同時に、口を挟んではいませんか? そして、部下の話を最後まできちんと聞き終えないうちに答えを決めつけ、部下の話を聴いたふりになっていないでしょうか?

 

経験を重ねると、自分の経験値で判断することが多くなります。自分の経験が相手の悩みの解決に役立つこともあれば、まったく違う知見からの解決策が必要なときもあります。

 

つまり、自分の持つ経験や解決策ありきではなく、相手が何を悩み、どう考えているのかに真摯に寄り添い、きちんと理解してあげることが重要なのです。最初から答えを持って接してしまうと、相手の真意を理解することができません。それはこうであろう、そうであろうと勝手な解釈をしてしまうと、相手は心を閉ざしてしまいます。

 

大切なのは、まず「相手を知る」ことです。すべてはそこから始まります。

 

私がチーフパーサーとして乗務していたとき、決して仕事ができるとは言えない部下がいました。同じ失敗を何度も繰り返し、仲間の乗務員にも迷惑をかけています。あるフライトで、乗務員同士の連携ミスでお客様を怒らせてしまったことがあったのですが、そのとき私の頭にすぐ浮かんだのが、彼女でした。

 

「今度は何をしでかしたんだろう」とミスの原因がわからないうちから、お客様を怒らせたのは彼女のせいだと思い込んでしまったのです。しかし、よくよく話を聴いてみると、お客様を怒らせたのは、他の乗務員の対応の悪さが原因でした。これでは上司として信頼されるはずはありません。

 

この事件を機に、部下を色眼鏡で見るのはやめようと反省することができました。今でも彼女には、申し訳なかったと思うのと同時に、上司としてのあり方に気づかせてくれたことを感謝しています。

 

相手が誰であれ、まずは「相手を知る」こと。そして自分の価値観を一旦手離して相手に接すること。これらを常に意識することができれば、人間関係は劇的によくなると確信しています。

 

 

山本 洋子

株式会社CCI 代表取締役

人財育成コンサルタント・キャリアコンサルタント・元JAL国際線チーフパーサー・客室マネージャー