(※写真はイメージです/PIXTA)
「相手のため」が「自分のため」になっていませんか?
私は現在、研修講師として全国の企業や官庁で、管理職研修や女性社員を対象にした女性活躍推進研修、キャリア研修などの企業研修を行っています。
また、航空会社で管理職乗務員として勤務した経験があることから、プライベートジェットの客室乗務員を育成する研修にも携わっております。さまざまな企業からご依頼をいただくのですが、病院やクリニックからのご依頼が多い研修が、ホスピタリティ研修です。そこで受講するスタッフからよく耳にすることがあります。
それが、「患者さんのため」に心配りをし、少しでも患者さんの不安を取り除きたいという声です。真摯に患者さんと向き合い、ホスピタリティ精神あふれる志には、とても好感が持てます。このように、ホスピタリティマインドの基礎がすでにできあがっており、患者さんのためにさらに上質な医療サービスを提供し、医療の品質を向上させたいというクリニックが多く存在することは、患者側からしても喜ばしい限りです。
では、「患者さんのため」ということは、どういうことなのでしょうか?
「患者さんのため」、強いて言えば「相手のため」という発想や行為には、実は大きな危険をはらんでいることがあります。私が客室乗務員としてフライトをしていた頃、お客様のためと思ってやったことがかえって迷惑になり、お客様を不快にさせてしまった出来事があります。
足が不自由で車椅子をご利用のお客様を接客したときのことです。国際線のフライトでしたので、途中化粧室をご利用されることが数回ありました。
そのため、出入りしやすいように化粧室のドアを固定したり、このお客様がご使用中は他のお客様がお使いにならないよう配慮したり、最大限お手伝いさせていただいたのですが、どうもご様子がおかしいのです。あきらかに不快な感情が表情に表れています。
いろいろ考えあぐね、恐る恐るお伺いしたところ、返ってきた答えが「自分でできることは自分でやります。手伝ってほしいときはお願いしますので」でした。私なりに「お客様のため」と思って行ったことが、実はお客様の負担になり、かえって迷惑になってしまっていたのです。
これはさすがにショックでした。「相手のため」にやったことが「相手のため」になっていない。そうであれば、それは相手にとっては大きなお世話、ただのお節介です。
「相手のため」にやってあげたのに! とショックを受けるのは思い上がり、大きな間違いだと思い知らされました。本当に必要なことは、「相手のため」ではなく、「相手の立場に立って」ということかもしれない、とそのとき気づいたのです。日常生活やビジネスシーンにおいても、同じような状況は多々あります。
よかれと思ってやったことが、実は相手にとっては迷惑であったり、不快であったりすることもあるのです。そんなときは、落ち込んだり、逆に相手を恨んだりしてしまうこともあるのですが、ちょっと視点を変えて相手を観てみましょう。相手のためにと思って行動する気持ちがあれば、相手の立場に立って考えることはできるはずです。
その気持ちが相手に伝われば、相手はあなたの気持ちを受け止め、好感を抱いてくれるでしょう。そのためにも、まずは「相手のため」が「自分のため」になっていないか、一度立ち返って考えてみるといいのかもしれませんね。
