首都圏模試センターの調査によると、2024年の私立・国立受験者数は5万2,400名となっています。前年に比べて微減しているものの、受験者数は年々増加。少子化傾向にもかかわらず、中学受験は加熱する一方です。しかし、「親の過度な期待」は時として子どもに深刻な悪影響を与えてしまうケースも……とある家族の事例をみていきましょう。2人の子どもを私立中学に通わせる石川亜希子AFPが解説します。
ウチの子は賢いに決まってる…世帯年収1,000万円・都内湾岸タワマン暮らしの40代夫婦「愛するわが子のため」が招いた大惨事【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

娘のためを思ったのに…「教育虐待」という言葉に、我に返るAさん

夫からの衝撃的な言葉を受け、ショックを受けたAさんは、「教育虐待」について詳しく調べてみることにしました。

 

すると、教育虐待とは、「子どもの心や身体が耐えられる限度を超えて教育を強制すること」とあります。

 

Aさんは身体的な暴力をふるっていたわけではありませんでしたが、教育虐待の一例としては下記のようなものが挙げられており、Aさんにとって身に覚えがあることばかりでした。

 

・成績について叱責する

・子どもの遊ぶ時間を奪い、習い事漬けにしている

・子どもの意思を尊重せず、志望校を勝手に決める

・「あなたのため」というフレーズを多用する

 

そして、「教育虐待の最大の原因は、親自身のコンプレックスにある」という記載を見つけ、ハッと我に返りました。

 

――数日後。AさんはCちゃんに、深く頭を下げました。

 

「叱りつけてばかりで、ごめんなさい。ママ、ママのできなかったことをCにやらせようとしていたみたい。つらかったら塾休んでいいし、中学受験……辞めてもいいよ」

 

すると、Cちゃんは言いました。

 

「……いいよ。カンニングはごめんなさい、もうしない。ここまで来たから、中学受験も頑張る。……だけどね、ママ、あたし本当は、D中じゃなくて行きたいところがあるの」

 

「子どもの気持ち」を優先に

「我が子にいい教育を与えたい」「将来の選択肢を増やしたい」中学受験を志す動機として、こうした理由がよく挙げられます。しかし、その気持ちが行き過ぎてエスカレートすると、今回のように「教育虐待」につながる可能性があります。

 

育児や教育に正解はありませんが、教育費については夫婦でしっかり話し合ったうえで、自分と子どもの境界が曖昧になっていないか、子どもの気持ちを尊重できているか、常に振り返っていたいですね。

 

 

石川 亜希子

AFP