念願かなって買ったマイホーム。しかし老後も住み続けるかといえば、そこには疑問符が付く人もいるでしょう。なかには老後を見据えて住み替えを実現する人も。趣味に没頭しながら、ゆったりとした時間が流れる老後。しかし夢のような生活が突然終わりを告げることもあるようです
「退職金2,500万円」「年金月35万円」老後は〈市民農園で野菜作り〉を楽しむ60代夫婦、老後崩壊の危機。きっかけは35歳ひとり娘の「怖いひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

野菜作りを楽しむゆったりとした老後が突如崩壊

山下さんの新居は、以前の住まいよりも郊外ではあるものの、交通の便や買い物の便はよく、それでいて環境がいいというロケーション。

 

――駅まで平坦の道であるということももちろんですが、この場所を気に入ったのは、少し歩いたところに市民農園があるところ。今、その一画を借りて、野菜作りを楽しんでいます。採れたての野菜が並ぶ食卓は、本当に贅沢です

 

2人とも仕事を辞め、手にした退職金はふたりで2,500万円。年金生活に入った今、生活のベースとなる公的年金は、祐一さんが基礎年金と厚生年金合わせて月20万円弱、素子さんは15万円ほどで、二人合わせて35万円。手取りにすると30万円を少し下回る程度です。派手な趣味のない二人にとって、十分すぎるくらいの金額で、貯金が増えるくらいだといいます。

 

お金の心配も住まいの心配もない老後とは、何とも羨ましい限りですが、ただそんな生活に暗雲が立ち込めたのは、ひとり娘の愛さん(仮名・35歳)。5歳と3歳になる孫を連れてよく遊びに来ては、「本当にいいところだよね、ここ」と、羨ましそうに話をしていました。「そうだろう。何なら近くに引っ越して来たらいいじゃないか」と冗談をいっていたのですが……

 

ある日、愛さんが「買うことにしたわ、家」と山下さん夫婦に報告。山下さん宅から徒歩10分ほどのところの分譲地に、家を建てることにしたといいます。

 

「まさか、本当に家を買うとは……」と、焦る山下さん夫婦。共働きの愛さん。夫婦の勤め先を考えると通勤とは逆方面となり、相当時間がかかるはず。だからこそ、この辺に引越してくるはずがないと踏んで、冗談をいっていたといいます。

 

――でも通勤が大変じゃないか?

 

すると、愛さんの夫は転職。むしろ山下さん夫婦の家の近くのほうが通勤の便がよくなるとか。「私は今フルリモートだから、どこでもいいの」と愛さん。さらにと何とも怖いひと言。

 

――じいじ、ばあばの近くのほうが、何かと便利でしょ

――スープも冷めない距離だから、毎食でも食べにいけそう

――今度、上の子は小学生だけど、下の子はまだ保育園だから

――フルリモートとはいえ、お迎えに行くのはシンドイのよ

 

次々と怖いひと言を連発する愛さん。山下さん夫婦に頼る気満々です。

 

――ゆったりと過ごせる老後が、崩れ落ちる音がしました

 

によると、夫婦における親との別居率は84.4%。別居する妻の父親との距離に注目してみると、「敷地内」が3.3%、「15分以内」が20.4%、「15~30分」が15.8%、「30~60分」が18.0%、「60分以上」が42.5%。全夫婦の4割ほどが、同居も含めて15分以内に親が住んでいるという状況。核家族化が進んでいるものの、多くの夫婦が親とはスープも冷めない距離にいます。共働きが標準となりつつあるなか、親と同居、もしくは近居という関係が都合がいいといえるでしょう。

 

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[関連資料]

国土交通省『住生活総合調査』

国立社会保障・人口問題研究所『第7回改訂動向調査報告書(2024年4月発行)』