公的年金は老後の大切な収入源。ねんきん定期便で見込み額をチェックして、老後のプランを立てている人もいるでしょう。しかし、いざ振込の段階になって、実際に受け取る金額が「思っていたよりも少ない」と慌てる人がいます。それはなぜなのでしょうか? 今回は、その理由と年金請求から受給までの流れ、公的年金からなにがどのくらい差し引かれているのかについて、坂本義雄さん(仮名・65歳)の事例と共に南真理FPが解説していきます。
俺の年金額が間違えられてる!年金月14万円見込みの65歳元会社員、振込通知書に記された「想定より少ない金額」に怒り心頭も…一転「知りませんでした」と反省したワケ
年金から引かれているものはなに?
坂本さんの公的年金からは、主に税金と社会保険料が天引きされます。
●税金…所得税、住民税
●社会保険料…介護保険料、国民健康保険料(75歳以上は後期高齢者医療保険料)
●税金
①所得税
所得税とは、個人の所得に対して課される税金です。公的年金の支払いを受けるときは、年金の支給額からその年金によって決められている一定の控除額(所得控除)を差し引いた額に5.105%を乗じた金額が源泉徴収されます。
坂本さんの場合課税所得=168万円(14万円×12カ月)-110万円(公的年金等控除)-48万円(基礎控除)となり、課税所得は10万円です。
よって、10万円(課税所得)×5.015%=5,015円のため、所得税は年5,015円となります。
②住民税
住民税は市町村に納める税金で、前年の所得に基づいて計算されます。公的年金を初めて受給する年には、前年に年金収入がなかった場合、公的年金に住民税は課税されない可能性があります。公的年金を受け取り始めた翌年から課税対象となります。
住民税は一律同じ金額の均等割(5,000円)と所得によって異なる所得割(税率10%)で構成されています。
住民税(所得割)=課税所得(年金額-控除額)×10%
+
住民税(均等割)=5,000円
坂本さんの場合課税所得=168万円(14万円×12カ月)-110万円(公的年金等控除)-43万円(基礎控除)となり、課税所得は15万円です。よって、
「15万円(課税所得)×10%=15,000円」+「15,000円(所得割)+5,000円(均等割)で、住民税は年20,000円となります。
●社会保険料
①介護保険料
介護保険は、市町村が保険者となって運営する社会保険制度です。40歳以上の人が加入し、65歳以上は第1号被保険者となり、要介護状態になった原因を問わず介護サービスを受けることができます。介護保険料は3年に1回見直され、市町村によって異なります。
2024年(令和6年)からの全国平均は月額6,225円となっていますが、市町村によって3,374円~9,249円と差があります。公的年金が年18万円以上の人は年金から天引きされます。
②国民健康保険料
65歳以上75歳未満の人で厚生年金に加入していない人は、国民健康保険料を支払います。介護保険料同様に、公的年金が年18万円以上の人は年金から天引きされます。年金の収入や地域、加入者の所得などによって計算方法が異なります。