公的年金は老後の大切な収入源。ねんきん定期便で見込み額をチェックして、老後のプランを立てている人もいるでしょう。しかし、いざ振込の段階になって、実際に受け取る金額が「思っていたよりも少ない」と慌てる人がいます。それはなぜなのでしょうか? 今回は、その理由と年金請求から受給までの流れ、公的年金からなにがどのくらい差し引かれているのかについて、坂本義雄さん(仮名・65歳)の事例と共に南真理FPが解説していきます。
俺の年金額が間違えられてる!年金月14万円見込みの65歳元会社員、振込通知書に記された「想定より少ない金額」に怒り心頭も…一転「知りませんでした」と反省したワケ
ねんきん定期便の落とし穴…老齢年金の請求と年金受給までの流れ
年金受給開始年齢に達し、老齢年金の受給権が発生する人には、受給開始年齢に到達する3ヵ月前に年金を受けるために必要な「年金請求書」が届きます。
この年金請求書には具体的な年金額の記載はありません。また、「年金は何もしなくても対象年齢になれば自動的に振り込まれる」と勘違いされることがありますが、年金受給をするためには必ず請求書を提出する必要があります。
年金請求書を提出すると、約1~2ヵ月後に「年金証書・年金決定通知書」が届きます。決定通知書には年金の加入期間や年金額の記載があります。ただし、ここで記載されている年金額は社会保険料や税金が差し引かれる前の金額、つまり「額面」です。
そして、年金証書・年金決定通知書が届いてから1~2ヵ月後(公的年金が銀行口座に振込まれる1~2週間前)に、年金振込通知書(または年金送金通知書)が届き、年金の受給が開始します。このタイミングで、初めて年金の手取額を知ることになります。
坂本さんは、毎年届くねんきん定期便では、年金受給額を確認していました。50歳未満まで届くねんきん定期便に記載されている年金額には、これまでの加入実績による見込額が記載されます(今後も現在の状況が続いた場合の見込額を表示)。また、年金受給が近づく50歳以上の場合には、現在の加入実績をもとに計算された確定値に近い額が記載されます(物価や制度の変更により変動する可能性あり)。
しかし、ねんきん定期便の年金額は、社会保険料や税金が引かれる前の概算額です。ここを押さえておかないと、坂本さんのように実際に受け取るときになって「金額が違う!」と驚いてしまうわけです。