公的年金は老後の大切な収入源。ねんきん定期便で見込み額をチェックして、老後のプランを立てている人もいるでしょう。しかし、いざ振込の段階になって、実際に受け取る金額が「思っていたよりも少ない」と慌てる人がいます。それはなぜなのでしょうか? 今回は、その理由と年金請求から受給までの流れ、公的年金からなにがどのくらい差し引かれているのかについて、坂本義雄さん(仮名・65歳)の事例と共に南真理FPが解説していきます。
俺の年金額が間違えられてる!年金月14万円見込みの65歳元会社員、振込通知書に記された「想定より少ない金額」に怒り心頭も…一転「知りませんでした」と反省したワケ
「年金の振込金額が少ない…これ何かの間違いじゃない?」
坂本義雄さん(65歳)は、半年前に継続雇用されていた会社を退職しました。坂本さんは独身で、両親もすでに他界しており、親の遺してくれた実家で一人暮らしをしています。
高校を卒業後に就職してから数十年。数度転職をしましたが、仕事が途切れることのないようずっと働き続けてきました。そのため、仕事を退職する寂しさよりも「ようやく人生の休息を手に入れられる」という気持ちの方が大きく、年金暮らしが待ち遠しくてしかたがありません。
今後は、まもなく受給し始める月14万円程度の年金とこれまで地道に貯めてきた1,500万円で、趣味の登山を楽しみながらゆっくりと老後生活を過ごす予定です。
年金の請求手続きを一通り済ませてからしばらくたったある日、坂本さんの元に「年金振込通知書」が届きました。初めての年金だとワクワク開封する坂本さん。しかし、そこに記載されていた2ヵ月分の振込金額は、坂本さんが予想していた額よりも少ない金額、1ヵ月あたり12万円台だったのです。
「え? ねんきん定期便では、確か1ヵ月あたり14万円ぐらいだったはず。これ金額間違ってるんじゃないか?」
思わず怒りがこみ上げる坂本さんでしたが、よくよく書類を確認すると、年金から税金や社会保険料が引かれていました。坂本さんはそのとき初めて、「年金の手取りは予想より少ない」という驚愕の事実に気付いたのです。
坂本さんは、会社員時代も税金や社会保険料が給与天引きだったため、あまり意識することはありませんでした。それもあってか、ねんきん定期便や年金請求手続き後に届く「年金決定通知書」が、年金の手取り額と完全に勘違いしていたのでした。
「こんなこと知らなかった……」