年金も多くもらっている、貯蓄もたんまりある…それでも家が借りられない
高齢のおひとり様、しかも借家……そこには「なかなか家が借りられない」という問題がはらんでいます。前田浩之さん(仮名・72歳)も、そんな問題に直面したひとりです。
――お金があれば、何とかなると思っていたのですが、そういうわけにはいきませんでした
大手企業の本部長まで上り詰めたという、元エリートサラリーマンの前田さん。その年金は月20万円と、厚生労働省の資料からすると、厚生年金受給者の上位25%にはいります。さらに「一生、結婚もしないだろう」とコツコツと資産形成に励み、その額5,000万円。ひとりで生きていくには十分な金額です。
そこでふと「家を買おうとは思わなかったのか?」という疑問。それに対しては「せっかくひとり身なのだから、身軽に行きたかった。持ち家だとどうしても家に縛られるから」と、前田さんなりの考えがあったようです。
そんな前田さん、長く借りているマンションがありましたが、建て替えが決まり、退去しなければならなくなったといいます。「ビンテージマンション、という雰囲気で気に入っていたんだけど」と名残惜しかったといいますが、そんなこと、言っていられなくなります。不動産会社でことごとく「その条件だと(家を借りるのは)難しいですね」と断られ、退去期限が間近に迫ってきたというのです。
あまりに断られるものだから、不動産会社で思わず「金なら、いくらでもあるぞ!」と大声を出してしまったといいます。それでも「そういわれましても、お貸しできないものはお貸しできません」と断られてしまったとか。「このままでは路上生活も覚悟しなければならない……」。そんな不安もよぎったといいます。
高齢者が賃貸物件を借りにくいのは、孤独死や認知症リスクが高いから。そのため、特にひとり暮らしだと借りにくい傾向があります。
また前田さんのように十分な貯蓄があっても、審査にはプラスに働かないことが多いようです。なぜなら、入居審査の際は「収入」のみで判断されることがほとんどだから。年金としては多くもらっている高齢者でも、現役世代と比較すると……オーナーがどちらを選ぶかといえば言わずもがな。一方で、高齢者でも仕事をしていると、審査にプラスに働く傾向にあるといわれています。
株式会社R65『高齢者向け賃貸に関する実態調査』によると、高齢者の入居を「受け入れていない」賃貸オーナーが約4割。高齢化が進むなか、高齢者を受け入れるオーナーは増加傾向にありますが、それでも完全シャットダウンのオーナーも今なお多数を占めます。
入居審査に落ちまくった前田さん。17件目でやっと入居できるマンションが決まりました。ただこの教訓を生かすべく、高齢者用施設への入居を今から検討しているといいます。
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