一定の収入がある高齢者の老齢厚生年金を減らす「在職老齢年金」。2000年以降に減額・停止の仕組みが導入され、現在の上限は50万円。実際に年金停止となるのは、働く年金受給者の16%に相当するといわれています。「一生懸命働いただけなのに……」そんな高齢者の嘆きが聞こえてきます。
ふざけるな!〈年金月22万円〉を受け取る65歳再雇用サラリーマン「年金が1年に1回増額になりますよ」に歓喜も、2年後、日本年金機構から「年金停止」の通知を受け取り大激怒

在職中「毎年10月に年金額を改定」働いた分だけ年金額に還元されるが…

――年金が増えるのなら、これからも働き続けます!

 

定年後も働き続け5年。その間、小林さんの勤めている会社では、再雇用制度の上限が70歳に延長になったとか。

 

――やることもないからと働き続けることを選びましたが、5年経ってもやることが見当たらなくて。家にずっといるようになったら妻に煙たがられる気もしますし……

 

そんなときに耳にしたのが、働きながら年金を受け取れる「在職老齢年金」です。

 

かつて厚生年金を受け取るためには、退職の要件がありました。しかし当時、高齢者の給与は低く、働いていても生活に困窮する人が多くいました。そんな事情から「働きながらでも受け取れる年金制度」として在職老齢年金制度は誕生したのです。

 

前述のとおり、厚生年金は働いた分、保険料を納めた分、将来の年金額に反映されます。ただ実際に受給額に反映されるのは、以前は70歳になってからか、または退職したときでした。しかし令和4年4月から「在職定時改定制度」が導入され、65歳以上の人は、在職中も毎年1回、10月に年金額が改定されることになりました。

 

――働いた成果がすぐに年金に反映されるのはいいね。俄然、働く意欲が増すよ

 

小林さん、65歳で受け取った年金額は老齢厚生年金が15.3万円。併給の国民年金と合わせると21.8万円ほどでした(当時)。また給与(=総報酬月額相当額。その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12)は30万円ほどだったといいます。

 

66歳で受け取った年金額は、老齢厚生年金が15.7万円と4,000円ほどアップ。増額はわずかでも働き続けることのメリットを感じたといいます。給与は同じく30万円ほど。

 

67歳で受け取った年金額は、老齢厚生年金が16.1万円と、さらに4,000円ほど増えました。また賃上げブームのなかで再雇用社員も給与アップの対象となり、給与は35万円に。ただし在職老齢年金の上限を1万円ほど超えてしまい、日本年金機構から年金停止の通知が届くことに……これには小林さんも憤慨。

 

――「働いた分、年金が増えるよ!」と言っていたのに、「働きすぎだから年金停止です」って意味がわかりません!

 

60代後半の就業率が5割超えのなか、在職老齢年金の廃止、または基準額を現行の50万円からさらに引き上げる改正案がいわれています。いつ、どのタイミングで改正となるかは不透明ですが、近い将来、年金を受け取りながら思う存分に働く時代がやってきそうです。

 

[参考資料]

厚生労働省資料『高齢期における年金制度』

日本年金機構『在職中の年金』