家計を支える大黒柱を失い、明日からの生活をどうすればいいのか……そんな途方に暮れる家族にとって、公的保障である遺族年金はまさに命綱。しかし、多くの人が対象になるよう制度設計されているものの、対象外で「遺族年金がもらえない」というケースも珍しくはないようです。
遺族年金「年70万円」もらえるはずが…月収45万円・47歳のサラリーマン夫を亡くした45歳妻、年金事務所で請求却下の「悲しい理由」

まさか自分は対象外!知っておきたい「遺族年金のルール」

山本さんの必死の訴えに対し、「ルールはルールなので」と却下。遺族年金の生計維持の要件は、「被保険者が亡くなった当時、収入が850万円を下回っていること」。このあと、たとえ収入がゼロになったとしても遺族年金の対象外であることに変わりはありません。

 

夫が亡くなったとき、遺族年金がないと困るという状況ではなかったので、遺族年金の請求は忘却の彼方だった山本さん。遺族年金ゼロという事実は変わりませんが、収入が減で「遺族年金があれば嬉しい」という段階で知るのは少々痛すぎました。

 

遺族年金がもらえないケースとして「子の要件を満たしていない」「保険料が未納」など。

 

①「子」がいない

遺族年金における子とは、18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人。結婚している場合も、子とは認められません。遺族基礎年金の場合、「子のある配偶者」と、子がいることが受給条件になっています。

 

②保険料が未納

保険料の納付要件として「①亡くなった日の前々月までの保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること」「②亡くなった日が2026(令和8)年3月末日までのとき、亡くなった人が65歳未満の場合、亡くなった日の前々月までの直近1年間に保険料未納がないこと」の2つがあります。保険料の免除・猶予を受けている場合は加入期間とみなします。さらに亡くなった人が老齢基礎年金の受給権者や受給資格を満たしていた場合、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上あることが支給要件です。

 

ほかにも、30歳未満の子のいない妻であれば、遺族厚生年金は5年間のみ受給可能だったり、夫が受給する場合、妻が死亡した当時に55歳以上でなければ対象とならず、しかも受給開始は60歳以上となったりするルールも。

 

このように、「ただし……」の注意書きが多い遺族年金。もらえると思っていたのにもらえない……ということのないよう、一度、細かな受給要件もチェックしておくといいでしょう。

 

[参考資料]

日本年金機構「遺族年金」