家計を支える大黒柱を失い、明日からの生活をどうすればいいのか……そんな途方に暮れる家族にとって、公的保障である遺族年金はまさに命綱。しかし、多くの人が対象になるよう制度設計されているものの、対象外で「遺族年金がもらえない」というケースも珍しくはないようです。
遺族年金「年70万円」もらえるはずが…月収45万円・47歳のサラリーマン夫を亡くした45歳妻、年金事務所で請求却下の「悲しい理由」

夫急逝から2年後、遺族年金の請求にやってきたら…

2年前に夫を亡くした山本久美子さん(仮名・45歳)。急な出来事で頭が真っ白になるばかりか、しなければいけない手続きがいろいろとあり、悲しんでばかりいられなかったことを振り返ります。

 

――夫を亡くして泣いたのは一瞬だけ。そのあとは忙しすぎて覚えていない

 

【家族死去後の主な手続きと期限】

■2週間以内

・年金受給停止

・健康保険の資格喪失届

・介護保険喪失届

・住民票の世帯主変更届

■1ヵ月以内

・雇用保険受給資格者証の返還

■2年以内

・国民年金の死亡一時金請求

・埋葬料請求

・葬祭費の申請

・高額医療費の還付申請

■5年以内

・遺族年金の請求

・故人の未支給年金の請求

 

今なおしていない手続きがあり、「期限が来るからきちんとしておいたほうがいいよ」とアドバイスを受けることも多いとか。そのひとつが遺族年金。遺族年金は国民年金に由来する遺族基礎年金と、厚生年金に由来する遺族厚生年金の2つがありますが、その請求の時効は5年とされています。

 

夫が亡くなってから2年。まだ余裕でセーフ。「収入が少しでも増えたら……」と思い、年金事務所に手続きに行きました。山本さんの夫(享年47歳)の当時の月収は48万円。山本さんが対象になるのは遺族厚生年金で、その受取額は亡夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。ざっと計算すると、年間70万円、月5.7万円ほどを手にできる計算だったといいます。

 

――月6万円弱。ありがたい

 

そう思っていましたが、年金事務所でまさかの展開。

 

――山本さんの場合、支給要件に該当しないので、遺族年金は支払われません

――えっ、それはどういうことですか?

 

山本さん、所得制限を超えていたため、遺族年金の要件から外れていました。遺族年金の受給者の対象となるのは、死亡した人に「生計を維持されていた遺族」でなければなりません。生計維持は「①年収850万円未満または年間所得655万5000円未満」「②死亡した人と住民票上同一世帯、または別居でも家計をひとつにしていた」という2つの要件を満たしていないと認められません。山本さん、それ以上の収入があったというのです。

 

――そんな収入があったのは前のことです。今はそんなに収入はありません

 

夫が亡くなってからの2年の間に勤めていた会社が傾き、山本さんは転職。ただし、以前ほどの給与はもらっていないといいます。「少しでも収入が増えれば」……、遺族年金の請求をしようと考えたきっかけのひとつだったのです。