妻と穏やかな年金暮らしを送る大川昭夫さんは、マイホームが欲しいけれど自分たちの貯金ではとても買えないと悩む娘の言葉を聞き、ひとつのアイディアを提案します。それが「二世帯住宅での同居」です。当初は自分たちも娘夫婦も満足をしていましたが、しばらくすると関係に思わぬ変化が。そして、それは最終的に取り返しのつかない事態を招くことに……。今回は大川さんの事例を通して、親子の同居や二世帯住宅購入を慎重にすべき理由などについて小川洋平FPがお伝えします。
こんな家買わなければよかった…。7,000万円で二世帯住宅を購入した68歳元会社員、幸せを噛みしめた3年後に娘夫婦と怒鳴り合いの大喧嘩→「地獄の同居生活」へ【CFPの助言】
二世帯住宅を建てる前に考えること
親子で一緒に暮らすことを考える際には、今回のケースのように生活スタイルやお互いの距離感の問題でトラブルになってしまうことに注意しなければなりません。また、二世帯住宅は需要の問題などから売却しにくく、もし今回のように関係性が悪化して別居したくなっても簡単には買い手が見つかりません。
ですので、もし二世帯住宅を考えるのであれば、同じ敷地内で二棟別々の家として建てるなど、生活を分離することができるようにするのをおすすめします。そうすれば、いざとなればお互いの家を行き来することもできる上に、仮にトラブルが起きたり離婚したりして手放さなければならない場合、両親が他界した場合などでも。建物が分かれているので買い手を見つけやすくなります。
また、もし二世帯住宅を建てて買い手が見つからない場合などには、売却するのではなくシェアハウスとして賃貸住宅にしてみたり、地元の企業に買い取ってもらい、社員寮として使ってもらったりするのも手段の一つです。シングルマザー向けやシニア向けなど、近年では特定の層に向けたシェアハウスなどもあり、家賃も安く水道光熱費も安く抑えて生活することができるため注目されています。
中には子供が結婚もしていないのに、子供が結婚した後に同居することを前提に二世帯住宅を建てようと考える方もいますが、今回のケースのように関係性が上手くいかなかった場合にどうするのか、家族構成が変わり二世帯住宅が不要になった際のことなどを考える必要があります。
建坪が大きければその分固定資産税や冷暖房などのランニングコストも高くなってしまいますし、屋根や外壁のメンテナンスにもお金が掛かります。もし暮らしが順調であっても、後々両親がいなくなったときにはそれらが大きなコストとして家計を圧迫してしまうことにもなります。
住宅を購入する際にもライフプランを考え、家族の環境が変化した際にどうするかも考えながら購入を検討しましょう。
親子関係にヒビ、ローン問題なども…同居や住宅購入は慎重に
今回は二世帯住宅を購入して後悔する結果になってしまった事例をお伝えしました。離れて暮らしていれば良好な関係性を保てても、一緒に暮らすと生活スタイルや考え方の不一致がどうしても気になってしまいますし、甘え過ぎてしまう、干渉し過ぎてしまうことで関係性が悪化してしまうこともあります。場合によっては、親とのトラブルが原因となり離婚してしまうような事例もあります。
親と同居すること自体をまずはよく考えた方が良いのですが、もし同居する際には前述のように、別々の建物にして売却したり賃貸にしやすい状態にしておくなど、柔軟に対応できるよう考えておくことが必要です。
また、親とのトラブルだけでなく、夫婦が離婚することもあります。その際ペアローンや連帯債務でローンを組んでいたことが離婚時に問題になってしまうこともあります。
マイホームは一生を左右する大きな買い物ですので、どういった問題が起きているのか情報を集め、家を買うべきかどうか、どのような家にするか、予算はいくらにするかなどを慎重に考えていきましょう。
小川 洋平
FP相談ねっと