妻と穏やかな年金暮らしを送る大川昭夫さんは、マイホームが欲しいけれど自分たちの貯金ではとても買えないと悩む娘の言葉を聞き、ひとつのアイディアを提案します。それが「二世帯住宅での同居」です。当初は自分たちも娘夫婦も満足をしていましたが、しばらくすると関係に思わぬ変化が。そして、それは最終的に取り返しのつかない事態を招くことに……。今回は大川さんの事例を通して、親子の同居や二世帯住宅購入を慎重にすべき理由などについて小川洋平FPがお伝えします。
こんな家買わなければよかった…。7,000万円で二世帯住宅を購入した68歳元会社員、幸せを噛みしめた3年後に娘夫婦と怒鳴り合いの大喧嘩→「地獄の同居生活」へ【CFPの助言】
別々に暮らしたいのに…身動きがとれない理由
「お互いにとって良いことだと思って同居をしてきたけれど、こうなってはもう難しいか……」
大川さんはそう考えました。同時に博美さん夫婦も、もう家を出て別々に生活したいと言い始めたのです。
しかし、再び別で暮らすためには二世帯住宅をどうにかしなくてはなりません。博美さん夫婦にとってはローンに加えて家賃を支払うことなど到底難しい状況で、大川さんに名義変更することもできません。しかし、夫婦二人だけで住むには60坪の二世帯住宅はあまりに大きく維持費も掛かります。
「仕方がない、家を手放そう……」
こう思った大川さんは地元の不動産会社に相談をすることに。しかし大川さんに伝えられたのは二世帯住宅は需要が無く、なかなか売るのは厳しいという言葉でした。
そうはいっても何とかなるだろう、当初はそう思っていた大川さんですが、しばらくして二世帯住宅が売れにくいという現実を受け止めることになりました。結局7,000万円で買った二世帯住宅を4,000万円にまで値段を下げても買い手がつかず、今にいたります。
そして、大川さん夫婦と娘夫婦は買い手が見つかることを願いながらも、いまだに仕方なく同居を続けています。せっかくお互いのためと思って買った二世帯住宅でしたが、親子関係を悪化させ、今は大きな足枷となって双方の夫婦を苦しめることに。大川さんに心穏やかな老後生活が戻ってくるのは、まだ先のことになりそうです。