妻と穏やかな年金暮らしを送る大川昭夫さんは、マイホームが欲しいけれど自分たちの貯金ではとても買えないと悩む娘の言葉を聞き、ひとつのアイディアを提案します。それが「二世帯住宅での同居」です。当初は自分たちも娘夫婦も満足をしていましたが、しばらくすると関係に思わぬ変化が。そして、それは最終的に取り返しのつかない事態を招くことに……。今回は大川さんの事例を通して、親子の同居や二世帯住宅購入を慎重にすべき理由などについて小川洋平FPがお伝えします。
こんな家買わなければよかった…。7,000万円で二世帯住宅を購入した68歳元会社員、幸せを噛みしめた3年後に娘夫婦と怒鳴り合いの大喧嘩→「地獄の同居生活」へ【CFPの助言】
次第に強くなる違和感…汚れた部屋の苦言を発端に大喧嘩が勃発
二世帯住宅が完成し同居を始めてしばらくすると、娘夫婦との間に次第に違和感を感じるようになっていきました。
1階に大川さん夫婦、2階が娘夫婦が暮らしていますが、娘夫婦は家の掃除をしばらくしていないのか床のあちこちに埃が積み重なるようになっていきました。それが下の階に来るときに足の裏についてきてしまうのか、大川さんが掃除をしても廊下が汚れてしまうのです。キレイ好きな大川さんは、それが気になってしかたありません。
そして、同居したことをきっかけに、娘の博美さんは両親に過剰に頼るようになりました。博美さんは自分の暮らす2階ではなく大川さんたちの暮らす1階に子供と一緒に入り浸り、子供が泣き止まないときは大川さん夫婦にすぐに押し付けるように。いくら孫が可愛くても、さすがにそこまでされると疲労もストレスも溜まります。
また、隆さんは仕事の客先の接待等で帰りが遅くなることもあり、休みの日もスマホでゲームをしている姿が目立ちます。大川さんは、そんな隆さんに対しても不満を募らせるようになってきたのでした。
そして、そんな生活が3年続いたある日、掃除をしていない2階の廊下の埃が気になった大川さんは、博美さん夫婦が不在のときに2階の掃除をしに行きました。リビングには服や孫のおもちゃが散らかり、足の踏み場もないような状態です。
さらに廊下の隅っこには、大きな埃があちこちに溜まっています。そんな惨憺たる家の状態を見ては、さすがの大川さんも黙っていることはできません。それまでもやんわりと指摘したことはありましたが、今回は厳しく博美さんと隆さんに注意しました。
「おい、いくらなんでも部屋が汚すぎるぞ。なんでこんなに片づけられないんだ。こっちのスペースにまで埃が入り込んでくる。二人ともなんでこんな基本的なことができないんだ」
しかし、勝手に部屋に入られたことを不愉快に思った博美さん夫婦は、逆に文句を言いだす始末。
「いくら二世帯住宅だからって、プライバシーってものがあるでしょ? 無許可でこっちの家に入っておいて文句言わないで。監視されてるみたいで本当に嫌!」
こうして、これまでの不満がお互い爆発し大喧嘩に発展してしまったのでした。