食べ物が腐り、ゴミが散乱する実家。父は風呂にも入らず…
――どうした、父さん?
部屋は散らかり放題で、食べ物が腐ったすえた臭いが充満しています。いつからゴミ出しをしていないのでしょう。大きなゴミ袋が積み重なっています。また大二郎さん自身、お風呂にまったく入っていないのは明らかな風貌です。秀樹さんの問いかけに大二郎さんは「何もやる気が起きなくて……」と力なくつぶやいたといいます。
旅行は急遽中止し、病院へ。そこで、うつだと診断されたといいます。
――それまで仕事だけをしてきたような人だったので。仕事を辞めた途端、抜け殻のようになってしまったんでしょうか
厚生労働省『令和6年版厚生労働白書』によると2020年の精神疾患を有する外来患者数は、約586万人。「55~64歳」が71.4万人、「65~74歳」が69.4万人、「75歳以上」が136.2万人。高齢者においては、加齢に伴う心身機能の低下や社会的役割の喪失に伴う不安感の増大などが、うつの発症に関わっているといわれています。また認知症とうつは合併することが知られていて、認知症の前触れとしてうつが現れる場合も。
また白書では「心の健康によい影響を与えている人」として、「同居家族がよい影響を与えている*」の回答が67.3%と、別居の家族や、学校や職場の友人・同僚、近隣の人など、さまざまな関係のなかでも突出しています。反対の見方をすれば、単身の高齢者は心の健康に対して不安にさらされているといえるでしょう。
*よい影響を与えている、どちらかといえばよい影響を与えているの合計
秀樹さん、父の病に対してどうすべきか、きょうだいで話し合っているといいます
[参考資料]