年金に依存する老後を想像できず…今までの人生を後悔
田中さんの年金は、手取りにすると月12万円強。これで十分というわけではありませんが、繰下げ受給をしたことで、「生活費を何とか年金内で収めることもできるようになった」といいます。
――これで十分とはいえず、年金以上に出費がかさむときもある。ただ年金だけで生活をしようと思えばできる。その違いは大きい
ただ年金については「後悔しかない」と肩を落として話す田中さん。確かに繰下げ受給は、年金が増額となるメリットがある一方で、「早く亡くなると、受給総額が65歳受給開始を下回る可能性がある」「年金受給額が増え、税金や社会保険料の負担が増える」「加給年金や振替加算が受け取れなくなる」というデメリットがあります。そのようなことを知らず、繰下げ受給を悔やむ人はあとを絶ちません。
――いや、繰下げ受給はしてよかったと思う。受給額が増えて、生活に余裕が生まれてから
田中さん、年金の繰下げについてはポジティブな意見を持っています。では後悔の要因とは?
――ちゃんと年金(保険料)を払っておけば、こんな苦労もないのに
田中さん、仕事が長続きせず、無職の期間が多かったといいます
――就職をしても、長続きがしないんだな。「俺はもっともできる」という変な自信があって、3年ともったことがない。おかげで貯金はないし年金も少ないし
年金保険料の納付が今のように厳しくいわれなかった時代。未納時期も多く、65歳から受け取れる年金は月10万円程度に。厚生年金受給者の月受取額は平均14万円といわれているので、それと比較すると少ないといわざるをえません。
――せめて基礎年金くらいちゃんともらえたら、あと3、4万円は違う。仕事を辞められる。本当に惨めだよ
後悔の念から涙を滲ませる田中さん。75歳になってもアルバイトを続けているのは、生活の糧を得るため。お金があれば働いていない。お金がないから働くしかない……それが後期高齢者となる田中さんの現実です。
内閣府『生活設計と年金に関する世論調査』によると、老後の生活において「全面的に公的年金に頼る」が26.3%、「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」が53.8%。なんだかんだいって、老後は公的年金に頼らざるを得ない現実を垣間見ることができます。ただ年金に頼るには、現役時代に年金保険料をきちんと納付していなければなりません。現在、年金を受け取る年金世代のなかには「きちんと保険料を払っておけばよかった」と後悔を口にする人が多数。
老後の生活設計において、年金に頼るつもりであればしっかりと保険料を払う、年金に頼るつもりがないならそれ以上に資産形成を頑張る、この2択しかないといえるでしょう。
[参考資料]