過去問で「時間配分」のシミュレーションをしよう
受験は満点を取ることが目標ではありません。問題を解く順番、時間配分、「この問題は捨ててこの問題は確実に取る」といった戦略も重要です。問題を解く順番を1つ変えるだけで、得点率は上がります。
例えば、数学で大問4題が出題された場合、第1問から第4問までざっと目を通して、自分の得意な単元の問題から解く、あるいは最も易しそうな問題から解くというのが大原則です。そして、最初に手をつけた問題が完答できれば、それが自信となり、他の問題も心にゆとりを持った状態で解けるので、得点が一気に上がります。
実際の入試では、第1問が難問というケースもあります。戦略もなく最初から順番に解いていくと、第1問で多くの時間を使っても解き切れず、完答できなかったということもよく起こります。しかも、次の問題が易しいにもかかわらず、焦ってしまって思うように得点できなかったら目もあてられません。入試本番の精神状態はかなり不安定になりがちなので、常日頃から、問題を解く順番や、時間配分、「この問題は捨てて、この問題は確実に取る」というようなシミュレーションをしておくと良いでしょう。
図表1の「過去問演習チェックリスト」では、解答順序や時間配分、捨て問の見極めもチェックできるようになっています。こちらもぜひ活用してください。
直前期に「過去問にしか手を出さない」はNG
直前期にも過去問を解きますが、最も効率の悪いパターンは、「直前期に過去問にしか手を出さない」ということです。さらに、その使い方も過去問を解き、答え合わせをして、間違えた問題を理解するためだけに時間を費やすだけでは対策にはなりません。過去に出た問題をできるようにすることは大切なことではありますが、「過去に出た問題とまったく同じ問題は実際には出ない」という意識を持って、目標点とのギャップをどう埋めるかを考えてください。
ギャップを埋めるには、今まで取り組んできた参考書や問題集を復習するのがベストです。直前期に新しい問題集に手を出すのは好ましくありません。使っている参考書や問題集は、自分の目指す大学の入試問題に合わせて選んでいるはずなので、過去問にプラスして、今まで使ってきた教材を解き直すことが大切です。
「合計点で合格最低点を突破するための戦略」を立てよう
入試が近くなってくると、時間が限られてくるので、「合計点を伸ばす」という考えも頭に入れておいてください。志望大学の過去問を解いて、その年度の合格最低点と対比してみます。
例えば、図表3のA君の例で考えてみましょう。
11月に2023年度の北里大学の過去問を解いてみたときに、その年の合格最低得点率が54.6%なのに対して、A君の得点率は45%でしたから、最低でも10%の得点力アップが必要になります。もちろん、これでは合格最低点ぎりぎりなので、合格最低点+10%くらいの得点率になるような作戦を考えます。
入試までの残りの2~3ヵ月間で、今の学力状況からどうしたら目標点を取れるようにできるのかの対策を立てるのですが、その際、総合計点で考えることが重要です。
A君の場合、「数学は合格ラインを超えていて、理科も半分近く取れるようになってきたので、あとは英語の得点力アップが必要だ」と考えがちです。英語は知識問題など「伸びしろ」があるので、これに賭けるのも1つの手ですが、英語の得点を短期間で伸ばすのは簡単なことではありません。これに対して、化学や物理のほうが身につけるべき内容が少なく、さらに頻出分野や出題傾向がはっきりしているので、こちらの得点を伸ばすほうが容易です。
また、数学は比較的得意なので、数学にも力を入れておけば、苦手な英語が大きく伸ばせなくても、総合計点で目標点に達することになります。苦手科目の得点率が30%でも、他の科目でカバーして合格できた例はたくさんあります。本稿の次ページを参考にしてください。
具体的な対策としては、まず合計点の合格最低点+10%くらいで目標点を設定します。次に科目ごとに設定するのですが、まず得点の伸びが大きそうな科目の目標点を高めに設定して、残りの部分を各科目に配分して、その目標点のギャップを埋めるために、残り3ヵ月でどのように対策するかを考えてください。満点を取る必要はなく、約65%で合格可能な大学も多いわけですから、仮に3分の1落としても大丈夫と考えてください。時間が限られている中で弱点を補うための学習計画ですので、すべての問題を完璧にしようと思わないことです。
図表4の「過去問演習 合計点管理シート」は、全科目の過去問演習終了後に記入して、合計点で合格点を突破するための科目間の学習バランスを考える際に活用してください。