医学部の学費が他学部より高い理由
国公立大学と違い、私立大学の医学部の学費が高いということはよく知られていることです。特に地元を離れて私立大学に進学する場合には、一般的に莫大なお金がかかります。
医学部は6年制のため、一般的な4年制の学部と比較すると2年間分の学費が余分に必要です。実習や実験も多いため充実した研究施設も必要で、生徒1人当たりの教員数も多くなり、このことが学費にも反映します。
6年間の学費:国公立は約350万円、私立は平均で約3,200万円
医学部は、他学部と比較すると留年率が高い学部ですが、留年をせずに6年間で卒業した場合の「6年間学費」は、どのくらいでしょうか。2024年度の実態を基に考えてみます。ここでは、授業料だけでなく入学金、施設設備資金、実験実習費、教育充実費などのすべてを加えた「学納金」で見てみます。
国公立大学は約350万円となります。1年間だと約60万円弱です。学生自身が奨学金の利用や家庭教師など時給の高いアルバイトをすることで、なんとか自分で支払うことが可能な金額です。
一方、私立大学(全31校)の6年間学納金の総額平均は、約3,200万円。国公立大学の約9倍になります。補助金との兼ね合いもあり、国公立大学よりも、私立大学のほうがはるかに高額な学費が必要となります。高額所得家庭でなければ、私立大学に通うことは難しい状況です。
私立大学は大学別に見ても、大きな違いがあります。最も安価なのは国際医療福祉大学(1,850万円)、次が順天堂大学(2,080万円)となっています。それ以下、上位11校まで2,000万円台になっています。
次に、学費が高い私立大学の上位を見てみると、最も高額なのは川崎医科大学(約4,700万円)です。次いで東京女子医科大学、金沢医科大学も4,000万円台となっています。医学部のある私立大学、31校のうち、約3分の2(31大学中20大学)が3,000万円以上となっています。
ちなみに私立大学については、学費と難易度にはある程度の相関関係があります。つまり学費の安い大学は、慶應義塾大学や日本医科大学のように、合格するためのボーダーラインが高い大学が多いです。
医学部の学費を抑える方法
「地域枠」で入学して、修学資金や奨学金を利用する
国公立大学や私立大学で、選抜区分のなかに「地域枠」などが設定されている場合、選抜試験で合格をすれば修学資金や奨学金を利用できます。給付される金額も、大学ごと、試験区分ごとで異なります。
私立大学のいくつかは、「地域枠」を利用すれば、東北医科薬科大学のようにほぼ国公立大学と同額の学納金となる大学もあります。
ただし、卒業後に一定期間(多くは在学年数の1.5倍、つまり最低9年間)は、大学や都道府県から指示された地域や病院で勤務することや、特定の診療科で医師としての活動をすることなど、いくつかの決められた要件を満たさなければなりません。要件を満たすことで、修学資金や奨学金などの返還が全額免除されます。
「地域枠」で入学した場合には、将来、医師としての医療活動に制限を受ける可能性もあるので、大学の説明会に行くなど、事前によく考える必要があります。
公的奨学金を利用する
奨学金にも様々な種類があります。最も有名なものとしては、日本学生支援機構(JASSO)が運用している奨学金があります。日本学生支援機構とは、学生の教育環境を整えることを目的とした独立行政法人です。経済的な事情により学費の支払いが難しい人に対して、奨学金事業を実施しています。
給付型の場合は最大75,800円/月、貸与型・無利子の場合は最大64,000円/月、貸与型・有利子の場合は最大160,000円/月となります。6年間に換算すると、最大1,152万円を借りることができます。慶應義塾大学や日本医科大学のように6年間で2000万円程度学費がかかる大学であれば、在学期間の実質学費負担額が900万円程度となります。
医学部は、教科書を中心に様々な専門書などの購入費用も高額になります。自宅を離れて一人暮らしをする場合には、住居費や食費も別途必要となります。
授業が忙しくて、アルバイトをできない場合もあります。受験校を選定する際には、医学部に入学してから卒業するまでに、どのくらい費用がかかるのかを、ご家族でじっくりと考えてみることが大切です。
「高い学費」の先にある、「年収1,000万円超」の未来
医学部を目指す場合、予備校の学費を含め、お金の問題を考えないわけにはいきません。とはいえ、医師は高所得な職業として知られています。その年収は地域や勤続年数、診療科目によって変わりますが、厚生労働省の『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、医師(46.1歳/勤続年数8.4年。男女計)の平均年収は1,436万4,700円*です。志望大学に合格して医学部生となり、医師となる未来への投資と考えると決して高くはないのかもしれません。
(*12ヵ月分の「きまって支給する現金給与額」に、「年間賞与 その他 特別給与額」を加えて算出。12×1090.7千円+1276.3千円=14,364.7千円)
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