穏やかな年金生活が始まったと思った矢先、巣立ったはずの娘がまさかの帰還。我が子が困っているのなら、手を差しのべてやりたいと思うのが親心というものです。しかし、過度な援助がお互いにとって悲惨な結果をもたらすことも……。本記事では、離婚した一人娘とその孫と暮らすことになった小林清さんを例に、年金暮らしの60代後半夫婦とシングルマザーの娘の家計管理のポイントについて、南真理FPが解説します。
年金月22万円、貯金3,000万円で穏やかに暮らす60代夫婦が一転、老後破綻に脅える毎日へ。原因は離婚して実家に舞い戻った「35歳の甘ったれ娘」【FPの助言】
離婚した一人娘と孫が戻ってきたことで、平和な老後が一変
今、小林清さん(69歳)の頭を悩ませている問題があります。それは、1年前に離婚して帰ってきた一人娘のさおりさん(35歳)のことです。
さおりさんの離婚は、元夫の借金が理由でした。結婚当初は夫婦関係もうまくいっていたそうですが、ハードな仕事のストレス解消のためか、元夫は、休みの日は、寝るかパチンコに行く生活を繰り返すようになりました。
さおりさんは就業経験もほとんどなく、専業主婦で経済力がないため離婚は踏みとどまっていました。しかし、なんとパチンコに使うお金をこっそりキャッシングローンしていることが判明したのです。家庭を顧みず、借金までする元夫にとうとう耐え切れず、経済的な不安はあったものの離婚を決断しました。
1年前の離婚当初、一人娘と孫の圭太君(当時4歳)が、小林さんは不憫でならず、できる限りのことはしてやろうと迎い入れました。しかし、さおりさんは一向に働き始める様子もなく、食費や日用品費といった生活に必要なお金だけでなく、孫の幼稚園や習い事代、週末のレジャー代等々すべてを年金生活者である小林さんが支払うことになりました。
さらに家族が増えたことで、買い替えた車にかかった費用は約150万円。これも合わせると。娘と孫のために1年間で約300万円のお金を使ってしまったことになります。
「少しはあなたも働いて」と言っても、あれこれ言い訳をするだけで就職活動をする様子はなし。親にお金を払ってもらっても遠慮する様子はなく「娘は親に甘えて当たり前」という態度です。挙句の果てに、幼稚園のママ友に感化されて、中学校は私学へ進学させたいなどと言い出す始末……。最近では妻の美紀さん(67歳)との言い合いも絶えないそうです。
こんな生活を続けていては老後破綻待ったなしだ……限界を感じた小林さんは、ファイナンシャルプランナー(以下、FP)に、今後どうすればいいのかを相談することにしました。
養育費の実情
さおりさんは、離婚時に元夫と養育費を月3万円支払うと取り決めをしたもののお金にだらしない元夫からの養育費の振込は滞っていると言います。
養育費は、離婚や別居した後に、親が子どもの生活費や教育費を負担するために支払うお金のことです。一般的には、子どもと一緒に暮らしていない親が、子どもを引き取って育てている親に対して支払います。『令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果』によると、離婚したときの養育費の取り決め状況は、「取り決めをしている」が、母子世帯では46.7%(*1) となっています。また、離婚した父親からの養育費の受給状況は「現在も受けている」が、28.1%(*2) です。このようにシングルマザーの多くは、養育費をもらっていないのが実情です。
養育費の取り決めは口約束ではなく書面化しておきましょう。書面は公正証書(公証役場で公証人に作成してもらう書面)で作成すれば、支払いがなされないときに給与や預金口座等の財産を差し押さえるといった強制執行が認められます。