平穏な年金生活を送っていた田中さん夫婦(仮名)。待望の孫の誕生に加え、息子家族が近くに引っ越してくることになり、ますます幸せな老後を送れるはずでした。しかし、孫への愛情が暴走し、気づけば貯金は激減。さらに息子夫婦との関係も最悪の事態に……。本記事では、「孫のため」と始めた行動が思わぬ結果を招いてしまった夫婦の苦悩について、FPの三原由紀氏が解説します。
70代年金暮らし主婦が“初孫フィーバー”で大暴走…2年後、「貯金枯渇」と「親子断絶」二重の危機に「よかれと思ってやったのに」【FPの助言】
孫への愛情が招いた予想外の展開
「まさかこんなことになるとは……」田中ミネ子さん(仮名・72歳)は、深いため息をつきました。
夫の正雄さん(仮名・75歳)と2人で年金生活を送るミネ子さん。2年前、遠方に住んでいた息子夫婦が近くに引っ越してきたときは、こんな未来が待っているとは想像もしていませんでした。
もともと息子夫婦は生まれたばかりの子ども(ミネ子さんにとっての孫)と3人、東京でマンション暮らしをしていました。しかし、東京での子育てにはお金がかかります。また、落ち着いた場所で子育てをしたいという希望もあり、ミネ子さんたちの住む実家近くのマンションに引っ越してきたのでした。
これにミネ子さんは大喜び。近くに息子がいれば何かと安心ですし、なにより孫の成長を近くで見守れることが嬉しかったといいます。
そして、「可愛い孫のためなら……」と、おもちゃに洋服に、ミネ子さんは惜しみなくお金を使っていきました。一人息子の子どもということもあり、孫への愛情は人一倍。正雄さんも最初は妻の行動を黙認していました。
夫婦の年金額は月22万円。同世代の平均的な額とはいえ、孫への出費を賄うには十分ではありません。老後資金として貯めてきた貯金は残り1,100万円ほどありましたが、金額がみるみる減っていく通帳を見て、正雄さんは次第に危機感を募らせていきました。
しかし、事態が決定的に悪化したのは、孫の初節句でのことでした。