15年以上ひきこもる40歳長男…「私たちが死んだらこの子はどうなる」

坂口剛史さん(66歳)は、継続雇用されていた会社を1年前に退職しました。老後に向けてコツコツ貯めた2,000万円もあり、住宅ローンも完済しています。

はたから見れば、妻博子さん(66歳)と順風満帆な老後を過ごしていくのだろうと思われますが、坂口さんは人には言えない問題を抱えていました。それは、15年以上家にひきこもっている息子、長男啓介さん(40歳)の存在です。

啓介さんは大学卒業後、システムエンジニアとして就職したものの深夜勤務や上司の𠮟責に耐えきれず、鬱のような状態になり、たった半年で退職してしまいました。その後はアルバイトを転々としていましたが、それも続かず、25歳頃からはまったく働かずに家の2階奥にある自室にひきこもっている状態です。

食事はドアの前に置かれたものを食べ、トイレやお風呂も極力家族とは会わないタイミングで使用。1日中ネットを見たり、オンラインゲームをしたりしているようです。

啓介さんがひきこもり始めた当初、坂口さんも苦悩していたため衝突も絶えなかったそうです。真面目で責任感の強い坂口さんにとって、息子が無職でひきこもっているという現状は、自身の価値観と大きく乖離していて、受け入れることが難しかったのです。その後もいっこうに表に出ようとしない啓介さんに、いつしか妻に任せきりにするようになっていました。

そして、啓介さんも妻も、周囲に長男の話は一切しなくなりました。子育てに失敗したと思われるのが怖かったのと、自分たちですら息子のことが理解できないのに、他人に理解してもらえるとは思わなかったからです。そのため、ご近所や親戚など限られた人しか長男がひきこもり状態にあることは知りません。

しかし、坂口さんが退職し、年金生活に突入したことを機に、妻から「このまま啓介がひきこもりの状態が続けば、私たちが亡くなった後どうなってしまうのだろう」と、改めて不安を伝えられたのです。2,000万円の資産と年金月24万円は、夫婦2人の老後資金としては十分だけれど、もう1人の一生を支えられるほどの金額ではないのでは……と。

今まで目を背けてきたけれど、この問題に向き合わねばならないと、やっと思えるようになったのです。