都内に就職したひとり息子が、33歳で「出戻り」したワケ

72歳のAさんと同じ年の妻・Bさんは、ある地方都市の戸建て住宅に住んでいます。すでに住宅ローンの支払いは済んでおり、現在は夫婦合わせて月33万円の年金を受給しながら、穏やかな老後を過ごしています。

Aさんは、60歳の定年まで地元にある企業に勤めたあと、2年間同じ会社で嘱託社員として勤務。10年前、62歳で完全リタイアしました。定年後は、妻と散歩をしたり、買い物に出かけたりと、近所でも評判の「おしどり夫婦」です。

2人には、36歳になるひとり息子のCさんがいます。

Cさんは、高等専門学校に進学したのち、20歳で都内にある大手電気工事会社に就職。そこで10年ほど勤務したあと、33歳で独立を決意し、実家に戻りました。現在は、個人で電気工事事務所を営んでいます。

開業するにあたって、Cさんは市役所や税務署で所定の手続きを済ませました。それまでは会社員でしたから、手続きのなかには、国民年金や国民健康保険への加入も含まれています。国民健康保険料は世帯ごとの納付であるため、自分の分はAさんに渡すことにしました。

その後、事業は順調に推移。3年が経ち、今年の事業所得は400万円近くになりそうです。

また、Cさんは本業の傍ら、投資も行うようになりました。Aさんが現役時代から株式投資を行っていたため、それを見習って始めたのだそうです。父親のアドバイスのかいもあり、こちらも成果は上々でした。

突然届いた「督促状」。その中に書いてあった「驚愕の内容」

そんなある日、Aさん宅に一通の督促状が届きました。見ると、差出人は「日本年金機構」となっており、「大切なお知らせです。必ず開封してください」と書いてあります。

「なんだこれは……」驚いたAさんは、Bさんに声をかけ、早速2人で中身を確認してみることにしました。

読んでみるとどうやら息子のCさんに「国民年金保険料」の未納があるようです。「指定した期日までに未納分を納付しなければ、①財産の差押え ②未納分に延滞金が課せられる」と書いてあります。

さらに、差し押さえの対象はCさん(被保険者)だけでなく、Aさん(連帯納付義務者=配偶者や世帯主)にもあてはまるというのです。

「冗談じゃない。いったいなにがあったんだ」Aさんは、すぐにCさんに電話をかけましたが、打ち合わせ中なのか何度かけても繋がりません。

(そうこうしているあいだに、自分の財産が差し押さえられるかもしれない。そもそも、なぜ成人した子どもの保険料を関係ない親が払うことになるんだ? もしも今後自分が息子の国民年金保険料まで払うことになったら、家計にどのくらい影響があるんだ?)……心配事が次から次へと頭を駆け巡ったAさんは、以前、相続の相談をしたことがある筆者のFP事務所に連絡したのでした。