尊敬する父の葬儀「最近は家族葬が一般的」の言葉で決断

「父は亡くなる前日まで元気で、日課の散歩も欠かさずにしていたようです」

真坂秀一さんは当時を振り返ります。秀一さんが尊敬する父は、40年間勤めた化学メーカーで役員まで出世し、地域の住民からも頼られる人望厚い人柄でした。

几帳面な性格で家事にも積極的に参加する父は、ある日、翌朝の朝食のテーブルセットのルーティンを終えた20時頃、胸の痛みを訴えました。すぐに救急搬送されるも、心不全で帰らぬ人となりました。

母からの一報で秀一さんは急ぎ病院に駆けつけましたが、間に合わず……。悲しむ間もなく、数時間後に病室をあけるように暗に促されました。祖父の代からお世話になっている地元の葬儀社に電話をすると、まもなく搬送車で駆けつけてくれました。そして、そのまま葬儀社の安置室に向かい、葬儀の打ち合わせが終わったのは夜中の12時過ぎでした。

母は日常生活は送れるものの軽度の認知症を患っており、葬儀の相談をすることは難しい状況でした。「家族で最後のお別れをどうするか話し合いたかったのですが、母は日によって話が通じないこともあり、判断を任されているような重圧も感じていました」秀一さんは当時の心境を語ります。

生前、父とも葬儀の形式について具体的な話し合いをしていなかった秀一さんは、近年の傾向も考慮して家族葬を選択しました。親戚も少なく、また高齢の参列者への配慮やコロナ禍の影響も判断材料となりました。葬儀社の担当者からも「最近は家族葬が一般的です」と背中を押してもらい、その方向で準備を進めることにしたといいます。

確かに葬儀自体は、厳かに、そして無事に執り行うことができました。しかし、それは新たな問題の始まりでもあったのです。