自営業を営む田中さん(仮名)は、事業を立て直すための資金繰りから、国民年金保険料の未納が続いていました。ある日奥さんが見つけた赤色の封筒に書かれていたのは「財産差押え」の文字。国民年金保険料を滞納した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。本記事では、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・CFPの角村俊一氏が、田中さんの事例をもとに解説します。
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保険料の滞納が続くと財産差押さえも現実的に
社労士は年金保険料の滞納から財産差押さえに至る流れを説明しました。
国民年金保険料が翌月末までの納付期限までに納付されない場合、まずは納付勧奨があります。それを無視していると年金特別催告状が複数回にわたって届きます。特別督促状は、送られるたびに封筒の色が「青」「黄」「赤(ピンク)」と変わっていきます。
奥さんが見たのは派手な赤色の封筒でした。赤色の封筒は、特別催告状がすでに何度も送られ、差押えに近い状態であることを示します。ただし、年金特別催告状はあくまで納付督励の段階であり、自主的な国民年金保険料の納付を促すものとなります。
そして、その後に届く最終催告状まで無視すると督促状が送られてきます。督促状は強制徴収の最初の段階に届くものです。督促状には指定期限までに滞納を解消しなければ延滞金を加算する旨が記載されており、それでも保険料が納付されない場合には差押予告通知書が届き、財産の差押えが行われます。
令和6年度の国民年金保険料額は1ヵ月あたり16,980円。決して安い金額ではありません。保険料は被保険者本人が納めなければならないことは当然です。しかし、法律上、配偶者にも納付義務が課せられています。
国民年金法第88条 被保険者は、保険料を納付しなければならない。
2世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う。
3配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う。
奥さんはネットで調べて配偶者である自分にも保険料の納付義務があることを知ります。日本年金機構のサイトには配偶者の財産も差押えの対象になるとも書かれており、お金に対する意識が高い奥さんは驚きのあまり、思わず「離婚する」とまで言い出したのでした。
国民年金保険料を滞納し続けるリスクとは
そして、社労士は田中さんに国民年金保険料を滞納し続けるリスクを説明しました。
①財産差押さえリスク
年金保険料の滞納による差押さえが実行されると、預貯金や不動産、自家用車など、さまざまな財産が差押さえられます。日常生活に影響が出ることはもちろん、事業運営にも影響を与える恐れがあります。
銀行口座を差押さえられてしまえば取引先への支払いもできません。重大な信用問題を引き起こしてしまいます。
②年金受給権を失うリスク
公的年金は社会保険制度です。将来、保険給付である老齢年金を受給するには保険料を納めなければなりません。よって、保険料を滞納すると年金を受け取るための資格を得ることができない恐れがあります。
老齢年金を受給するには、国民年金や厚生年金への加入期間が合計で10年間必要です。年金受給権そのものが得られなければ老後の生活はかなり厳しくなるでしょう。田中さんは学生時代にも未納期間があるようですから、念のため、これまでの年金加入記録を確認することを勧めました。