賃貸暮らしを続けている人の中には、定年が近づいてきた時期に、老後を見据えて「自分らしい住まい」を確保したいと思う人もいるのではないでしょうか。しかし、慌てて家を購入すると失敗や後悔をすることになるかもしれません。今回は、猫と暮らすために中古マンションを購入したものの大きな不安を抱えることになってしまった54歳の女性を例に、住まいの選択をどう考えるべきか南真理FPが解説します。
とんでもない失敗をしたかもしれない…。54歳独身女性、念願の「猫との暮らし」のため2,300万円の中古マンション購入するも、半年後「猛烈な不安」に駆られたワケ【FPの助言】
「猫と一緒に暮らしたい」54歳独身女性の決断と、その後に溢れ出た不安
地方都市で事務員として働く大野真由美さん(54歳・独身)は、住宅ローンを組んで購入した中古マンションに半年前に引っ越しました。それより少し前の子猫との出会いが、大野さんの住み替えの理由です。
仲のよい友人が飼っている猫が子猫を生んだというので、大野さんは友人宅を訪れました。そして、生まれたばかりの子猫を抱き上げた瞬間、どうしても引き取りたいと思ってしまったのです。
大野さんの猫好きは親の影響が大きく、実家では猫のいる生活が当たり前でした。就職してからは都内のワンルームの賃貸マンションに引っ越し、この数十年で何度か引っ越しはしたものの、どこもペット不可の物件。しかし、心の底でずっと猫との暮らしを切望していました。
50代になり、節目の60歳まであと数年になった大野さんは、今後の生活を考えると猫との暮らしをどうしても実現したいと思ったのです。友人からも信頼できる大野さんであれば「喜んで子猫を譲りたい」と言ってもらいました。
大野さんは急いで住み替えのため物件を探し始めました。最初は賃貸をメインに探し始めたのですが、ペット可の賃貸物件は賃料が割高になることから、中古マンションの購入を不動産屋に提案されました。大野さん自身もそろそろ「終の棲家」を見つけたほうがいいのではと考えました。
そんな中、自分も猫も住みやすそうな物件を見つけた大野さん。不動産屋は「こんなに条件のいい物件、なかなか出ませんよ」「迷っているうちに先に買われてしまうかもしれません」と購入を急かしてきます。
猫と住める家を早く見つけなければ、という焦りもあった大野さんは、勢いに押される形で2,300万円の中古マンションを購入することに決めました。そこからはあっという間に話が進みます。節約してコツコツ貯めてきた貯金2,000万円の中から1,500万円を住宅ローンの諸費用やマンション購入の頭金に使いました。そしてローン1,000万円を組み、夢だった猫との新生活が始まったのです。
猫との暮らしは、この上ない幸福感がありました。しかし、「借金は少ない方がいい」と頭金を多く入れたことで、2,000万円あった貯金は500万円まで激減。絶対に猫のことを守らなければという責任も加わり、通帳を見るたびに大野さんは老後の暮らしに強い不安を感じるようになりました。
「万が一、住宅ローンを払えなくなったらどうしよう」「独身だからパートナーにも頼れないし、年老いた親にも負担はかけられないし……。もしかして家を買ったのは失敗だった?」
中古マンションを購入したことで、こんなにも不安を感じるとは思っていなかった大野さんの選択は、果たして正しかったのでしょうか。