「やっと一人になれた」…74歳女性が初めて迎える"解放された"年末年始

静岡県に住む安達喜美代さん(74歳・仮名)は、今年の年末年始を心待ちにしていました。

昨年夫(享年79歳)を亡くし、同居していた長男・泰久さん(50歳・仮名)は今年妻や長女と海外転勤。大学生の孫(泰久さんの長男)は東京で一人暮らし。喜美代さんは、人生で初めて年末年始を一人で過ごすつもりです。

「お母さん、一人で大丈夫? 私たち、年末に泊まりに行こうか?」

一人暮らしの喜美代さんを案じた、神奈川県に住む長女のしのぶさん(46歳・仮名)から電話が入りました。しかし喜美代さんは

「大丈夫よ。しのぶちゃんは家族でゆっくり過ごしなさい。お母さんは一人で十分楽しめるから」

と、きっぱり答えました。

喜美代さんは結婚以来、夫の両親と完全同居。三世代同居の家で子育てをしながら義父母に気を遣い、子どもの手が離れてからは義父母の介護、そして病気になった夫の看護と、常に誰かの世話をする生活でした。

年末年始も例外ではありません。元日の朝も家族が起きてくる前に台所に立ち、おせちの支度をし、配膳が終われば洗い物。紅白歌合戦を座って見た記憶は、ほとんどないといいます。

「孫が小さい頃は、しのぶの家族が遊びに来るのも正直大変でした。数日前から泊まり用の布団を干して、喜ばせようと料理をたくさん作って、お土産も用意して。帰ったら掃除も大変で、終わるとどっと疲れが出ていました。毎回お金もかかるし、嬉しい反面、いろいろと苦労があったのです」

しかし、義父母が亡くなり、夫が亡くなり、長男一家が海外へ。74年の人生で初めて、喜美代さんは自分だけの家を手に入れたのです。

現在の収入は遺族厚生年金と老齢基礎年金で月13万円。貯金は1,000万円と多くはありませんが、持ち家でローンは完済しているので、喜美代さんは「これで十分」と言います。

娘のしのぶさんは、結局1泊だけ母と一緒に新年を過ごすことにしました。喜美代さんも娘の顔が見たくないわけではありません。親子二人でお正月を過ごし、そのあとは気楽な一人暮らしに戻るつもりです。

喜美代さんが今、一番楽しみにしているのは、平日昼間の映画館、図書館通い、そして近場の温泉旅行です。

「人に気を遣わず、自分のペースで好きなことをする。娘の心配はありがたいですが、孤独は感じていません。74歳にして初めて自由時間を存分に楽しんでいます」