さまざまな理由でひきこもり状態となっている中高年。なかには、自宅に引きこもるようになって20年以上と、引きこもりが長期間に及ぶ場合も。引きこもりの生活を親が支える、ということも珍しくありません。しかし、通常は親が先に亡くなるもの。そのとき、引きこもりの中高年は……。
愚かでした…年金「12万円」82歳母、「働かない45歳ひとり息子」に毎月「10万円」の小遣いを渡した日々を悔やみ号泣

仕事で辛い思いをしているひとり息子に「そんな思いまでして働くことはない」と母

――いま思えば、愚かでした。もう手遅れですよね

 

ひとり息子である井上直人さん(仮名・45歳)への関わりについて、後悔を口にしながら号泣する井上美代子さん(仮名・82歳)。なかなか子宝に恵まれず、肩身の狭い思いをしているなか、37歳にして授かったわが子。周囲が呆れるほど、大切に育てたといいます。

 

――甘やかして育てたといえばそれまでですが、私にとって、子どもは自分の命よりも大切な存在。一卵性親子などと揶揄されることもありましたが、それでも構いませんでした

 

一卵性親子。その関係性は直人さんが社会人になってからも。直人さんが大学を卒業したころ、当時は世にいう就職氷河期真っ只中でした。直人さんは就職はできたものの、希望する企業、希望する職種では内定が出ず、唯一内定を獲得した企業に就職しました。不本意ながらも、会社名は誰もが知るような大企業。そんな会社に就職できたのですから、美代子さんも鼻が高かったといいます。

 

しかし直人さんは違いました。希望していない会社で希望していない仕事をする毎日に、徐々に心を病んでいきます。そんな様子をみて、「もう会社はやめなさい。そんな思いまでして働くことはない」「あなたが働かなくても、一人くらい養っていけるわ」と美代子さん。そのひと言で、直人さんは1年で会社を辞め、美代子さんはパートに出るようになったといいます。このとき美代子さん、すでに60代。

 

その後直人さんは、自分のやりたい仕事に対して何かするわけでもなく、ただ家にいるだけ。いわゆる引きこもり状態に。働くことなく、20年以上。一緒に入社した同期のなかには、部長にまで昇進した人もいて、いずれは役員になるのではという風の噂です。

年金生活に突入しても「引きこもりのひとり息子」に小遣いを渡し続けた母

内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』で、40~69歳を対象とした引きこもりの実態をみていくと、「あなたの外出状況が現在の状態となって、どのくらい経ちますか。」の問いに対して、最も多かったのが「2~3年未満」で20.8%。「3~5年」15.0%、「1~2年未満」11.0%と続きます。直人さんのように「20年以上」というのは、全体の6.6%でした。

 

*「20~25年未満」2.0%、「25~30年未満」1.6%、「30年以上」3.0%

 

また年代別にみていくと、直人さんと同年代(45~49歳)に絞ってみていくと、「45~49歳」と直近のケースが最も多く40.4%。続いて「40~44歳」が24.6%。直人さんのように20代前半という人たちは5.3%でした。

 

さらに「あなたの外出状況が現在の状態になったのは、何歳の頃ですか。」の問いに対して、最も多かったのが「退職したこと」で37.3%。「新型コロナウイルス感染症が流行したこと」29.3%、「病気」17.3%、「介護・看護を担うことになったこと」11.5%と続く一方で、「特に理由はない」というケースも13.4%ありました。

 

引きこもりとなって20年以上ですが、その間、美代子さんはずっとお小遣いを渡していたといいます。その額、月10万円。それは美代子さんが仕事をやめ、年金月12万円を手にするようになってからも続いていました。「私にできることといえば、それくらいだった」と美代子さん。

 

――働いていたら、もっとお金を稼ぐことができたはず。そう考えたら、月10万円なんて安いものと考えていました