一度は仕事を完全に辞めたが…再び働き始めた高齢者
お金のために働く1,000万人を超える高齢者。逆の見方をしたら、仕事から完全引退の高齢者は「もうお金を得なくてもいい」と考えた人たちか、何らかの事情で働けない人たちといえるでしょう。
加藤清さん(仮名・75歳)さんは「もう、お金を得なくてもいい」と考えた人のひとり。仕事を辞めたのは、さかのぼること15年ほど前。
――もともと大手メーカーで働いていました。60歳定年後も継続して働くつもりでしたが、ちょうどリーマンショックで、その話は立ち消え。退職金は払うからとっとと出ていってくれ、というのが会社の本音だったのかな
定年退職金は2,400万円ほど。加藤さん、「仕事以外に特に趣味もないので」と、景気が良くなったらまた働こうかと思っていました。しかし、そうこうしているうちに65歳となり、年金を受け取り始めると働く気はすっかりと失せたといいます。
――年金はわたしが月18万円、妻が月9万円。夫婦合わせて月27万円ほどになります。家のローンもなくなると、それで十分暮らしていけることがわかり、さらに孫に小遣いを渡すこともできる。もう十分かなと思いました
そんな加藤さんが再び仕事を始めたのは、コロナ禍明けの昨年から。主にスポットワークで働いているといいます。
――収入は月5万円、多いときで月10万円くらいかな
働く理由。それは奥さんの介護費用の増加。認知症と診断され2年。自宅での介護を諦めて施設に入所したそうです。
――以前、親が施設にお世話になったころは月額15万円程度だった。妻の施設は月20万円を超える。年金は妻の介護費用ですべて消えます。いますぐお金がなくなるということはないけど、いずれ自分も……と思ったら、ただお金が消えていく生活が怖くて怖くて。まさかこんな状況になろうとは、思ってもみなかった
年金が頼りの日本の高齢者。昨今の物価高により、高齢者の生活はひっ迫しています。それは十分な退職金を受け取り、夫婦で十分な年金を受け取っている加藤さんも同じです。
ただ、現役復帰を果たした加藤さん、必要に迫られ働き始めたときはどこか悲壮感にあふれていたといいますが、いまはそんなことはないといいます。
――家でただひとりでいるよりも、働いてお金を得られるのはいいね。物価はまだまだ高くなるだろうから、働けるうちは働いて収入を得たほうが精神的にラクだよ
[参考資料]