一家の大黒柱が亡くなった場合、公的な死亡保障となるのが遺族年金。残された遺族の生活を安定させるためにも必須のものですが、ルールは複雑で、知らず知らずに受給要件から外れている場合も。万が一のときに泣きをみないよう、自身が受給要件に当てはまるかどうか、一度、チェックしておくほうが賢明です。
嘘ですよね!?月収50万円「48歳再婚夫」急逝で、新婚生活わずか1年で終焉。失意の「45歳再婚妻」年金事務所で聞いた「遺族年金額」に唖然のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

なぜわたし「遺族年金」を受け取れないのですか?

新婚1年で起きた、突然の不幸。遺族厚生年金と遺族基礎年金で、年間176万円、月14.7万円ほどの遺族年金が受け取れる計算で、そのほか手当ても含めると通常は月20万円程度の保障があるでしょうか。

 

それで十分かどうかはそれぞれの判断になりますが、まずは生活を安定させるためにも、きちんと遺族年金の請求を済ませるのが第一。山中さんも葬儀がひととおり終わったあと、まずは年金事務所を訪れたといいます。しかしそこでショッキングなひと言。

 

――遺族年金は受け取ることができません

 

原因は、山中さんの10歳になる連れ子と再婚した夫は養子縁組をしていなかったことにありました。

 

遺族基礎年金は、「子のある配偶者」または「子」が受給対象者になります。ここでいう子は「18歳到達年度の末日までの子(障害等級2級以上なら20歳未満の子)」であり、「被保険者の子」である必要があります。連れ子でも養子縁組していれば「被保険者の子」となりますが、養子縁組していなければ子の要件からは外れます。

 

また山中さんの亡くなった夫には、前妻との間に子どもがいました。遺族厚生年金の受給対象者には優先順位があり、「子のある配偶者」「子」>「子のない配偶者」となりますが、亡くなった夫と山中さんの連れ子は養子縁組をしていないため、山中さんは子のない配偶者となります。つまり、「前妻との子」>「山中さん」となり、遺族厚生年金も受け取れない、ということになるのです。

 

まさかの「遺族年金ゼロ」の事態に、「な、何かの間違いですよね!?」と問いかけるのが精いっぱいだったといいます。

 

遺族に対する公的保障である遺族年金。一緒に生活していれば、当然受け取れるものと考えられるでしょう。しかしルールは複雑で、特に再婚などが絡むと、知らず知らずに受給要件から外れている場合も。注意する必要があります。

 

[参考資料]

生命保険文化センター『生活保障に関する調査2022年度』

日本年金機構『遺族年金(受給要件・対象者・年金額)』