日本の高齢化は加速し、高齢者数も総人口に占める割合も過去最高を記録。それに伴い、心配されているのが認知症患者の増加です。いまは他人事のように感じている人でも、自身が、家族が、認知症になったら……そのときの生活がどうなるのか、想像できますか?
もう惨めで辛いです…年金18万円「78歳元教師」の男性、自宅に帰ることができず警察に保護、家族の前で流した涙 (※写真はイメージです/PIXTA)

元教員父の異変に、家族は認知症を疑ったが…

家族が認知症になったら……リアルに考えたことがある人は、どれほどいるでしょうか。実際に家族や身近な人に認知症患者がいれば想像もしやすいかもしれませんが、そうでなければどこか遠い世界のように感じているかも。

 

ライフネット生命株式会社が20~60代男女に対して行った『認知症に関するアンケート調査』によると、「認知症と診断された家族がいる」と回答したのは、全体の24.3%。年齢があがると「認知症の家族がいる」の割合は上昇。それでも60代男性で31.0%、女子で35.0%と3割強。

 

また「自身の認知症に対する考え方」として、「自分は認知症になると思う」と回答したのは16.4%。家族に認知症患者がいると回答した人は24.7%、家族に認知症患者が2人以上いると回答した人は33.3%と数値は増えますが、それでも自分自身のことになると、よくわからなかったり、自分はならないと思っていたりするよう。

 

*「自分は将来、確実に認知症になると思う」と「自分は将来、認知症にたぶんなると思う」の合計

 

むしろ認知症にはネガティブなイメージを抱きがちなので、「家族は認知症になったけど、自分はならない、なるわけがない」と思い込んでいるのかもしれません。

 

元教師の山本修さん(仮名・78歳)の家族も、「お父さん(山本さん)、まさか自分が認知症になるなんて、思ってもいなかったんじゃないかな」といいます。

 

奥さんを亡くして10年。自宅で1人暮らしていたという山本さん。車で30~1時間ほどのところに長女家族と次女家族の家があり、結構な頻度で実家に顔を出していたといいます。

 

――会うと「そんなに頻繁に来なくてもいい、子どもじゃないのだから」とそっけない態度をするのですが、帰ろうとすると少し寂しそうな顔になるんですよね(笑)

 

そんな山本さんに異変を感じたのは、いまから2年ほど前のこと。

 

――今日は年金の支給日だよな

――何回いうのよ、それ

 

そんなやり取りがあったと思えば、

 

――あれっ、今日は何日だ?

――15日。年金の支給日でしょ

 

そんなやり取りも。月18万円程度の年金を手にしているという山本さん。2ヵ月に1度振り込まれる年金が頼りの生活を送っているため、以前から年金の振込日は一大イベントでしたが、それを何度も確認したり、かと思ったら忘れてしまったり。こんなことが何度か繰り返し起きたので、家族は「おかしい、認知症では?」と疑うように。

 

しかしそれを本人に伝えたところ、激怒されたとか。

 

――わたしが、認知症!? バカなこと、いうな!