(※写真はイメージです/PIXTA)

資産形成を加速させたいとき、「副業する」という選択肢もあります。しかし、本業が多忙だと、副業で収入を得ようとしても、時間がとれず、なかなか難しい。どうにかならないものか……そんな思いに付け込んだ詐欺なども横行しているので、副業を考えるなら慎重に比較検討しなければなりません。長岡FP事務所代表の長岡理知氏が本業を邪魔しない副業について回答します。

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高まる「資産形成の重要性」…投資に回せる原資を確保するには

2019年の金融審査会市場ワーキング・グループ報告書において「老後2,000万円問題」が話題になったことは記憶に新しいことと思います。「2,000万円の貯金が必要だなんて、どんな夢物語なの?」「2,000万円を貯めるなんて絶対不可能」などと、SNSでは多くの人が憤慨していました。

 

しかし実際には2,000万円では足りないというのが現状です。この報告書では住宅費を13,656円と見積もっていて、住宅ローンの返済や家賃の負担がない場合の試算となっているのです。住宅ローンを完済できていない場合や賃貸住まいの場合は、4,000万円以上の蓄えが必要になるケースは珍しくありません。

 

家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)によると、40歳以下の平均貯蓄額は812万円という結果でした。812万円という金額に驚く方も多いでしょう。あくまでもこれは平均値です。より具体的に、30代で年収別に中央値を見ていくと、年収500万円~750万円未満の層では貯蓄額は200万円となっています。こちらの数字のほうがリアルに感じられるのではないでしょうか。

 

コロナ禍を経て物価が上昇しているのはご存じの通りです。東京都内ではマンション価格が平均1億円を軽く超えています。「老後2,000万円問題」はコロナ禍以前の試算ですから、もはや参考にならないと言っても過言ではありません。

 

そこで多くの人が考えるのが「投資」「資産運用」です。新NISAの制度が始まったことで投資が身近になっていますが、そこに回せる金額が少なければ、いくら運用利回りが良くても老後に必要な金額には届きません。多くの家庭では毎月の生活に追われ、投資に回してもいい余剰資金が全くないか、あったとしてもごくわずかであるのが現実です。

 

まずは投資に回せる原資を確保する必要があります。そのため多くの人が「副収入を得たい」と考えるのですが、残念ながら決してうまくはいかないのが現実です。ある会社員の事例をご紹介していきます。

 

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年収のわりに少ない貯蓄…副業で貯蓄加速を試みる

[事例]

Sさん 会社員 42歳、子ども3人

年収:1,500万円

貯蓄額:450万円

住まい:賃貸マンション

 

Sさんは東京都内の大手メーカーで働く42歳の男性です。新卒で就職し順調に昇進をしてきました。現在の年収は1,500万円。それが決して高いとは思っていませんが、会社の経営が傾かない限りはさらに昇給を期待できるはずです。

 

しかし、Sさんの預貯金は450万円。年収に対して少なすぎる蓄えだと自覚していて、それが最近の悩みです。

 

お金が貯まらないのは明確な理由があります。子ども3人が私立小学校に進学したこと、愛知県の実家が老朽化したためリフォーム代として1,000万円を支援したこと、それに対する贈与税を支払ったことなどによって、貯蓄額を大きく減らしてしまいました。

 

コロナ禍以前にタワーマンションを購入するつもりでしたが、家計収支を計算してみると年収1,500万円では住宅ローンの返済と教育費の負担が両立しないことが分かり、購入を諦めました。

 

最近では預貯金が少ないことが気になり、仕事に着ていく服はすべてファストファッションで、それすら新しいものを買うのに躊躇してしまう状態です。

 

このままでは子どもの大学資金を出せず、自分の老後も惨めそのものではないかと考え不安に襲われます。

 

そこでSさんが考えたのが「副業」です。本業の傍らで月20万円以上稼ぐことができたら、資産運用や貯金に回せるのに……とネットで検索してみると、実に多くの情報が出てきますが、ほとんどが胡散臭いものばかりです。ネットワークビジネス、個人輸入ビジネス、転売ビジネス、情報商材ビジネスなど、まっとうな会社員がやるべきものには思えません。調べてみると、副業をかたる詐欺も多いとか。副業でお金を稼ぐどころか「養分」としてさらにお金を失って終わりでしょう。

 

――なにかいい副業はないものか

 

そう考えたSさんは、FPに相談してみることにしました。

 

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副業で資産形成を目指すときの落とし穴

FPからはやはり、副収入を得るか、専業主婦の妻が就職しないと老後資金が用意できないという計算結果を見せられました。妻に就職するように言うのは気が重いため、やはり副業で収入を増やそうという方向で検討することに。

 

「副業をするときには落とし穴があります」とFPが指摘しました。それは、時間と体力の問題だといいます。

 

会社員にとっての副業は、アルバイトのように時間を売って時給を得るような行為は論外でしょう。そもそも本業が忙しいため、いわゆるダブルワークをするような時間はありません。時間と体力を削っても得られる時給はごくわずかです。とうてい毎月20万円の収入にはなりえません。

 

必然的に自営のビジネスを持つことになりますが、こちらもまた時間と体力という問題が立ちはだかります。平日の深夜や休みの土日を費やしてビジネスを行うことになります。自営のビジネスですから毎月20万円は現実的になりますが、問題はそれを今後何年続けることになるのか、です。42歳の今はいいかもしれません。しかし、50代となり体力が落ちた後でも続けられるでしょうか。

 

いずれにしても最も重要な本業に悪影響が現れます。副業によって体力がそがれ、集中力が落ちたら本業でミスをすることも増えるでしょう。勤務先で副業が許可されていたとしても、その内容によっては利益相反となり勤務先に迷惑をかけてしまうこともあります。倫理的にグレーな副業であれば、本業での職を追われる危険もあるのです。

 

そこでFPが推薦したのが、不動産投資です。

 

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本業が忙しい人こそ、不動産投資がおすすめの理由

不動産投資、とくに一棟アパートや戸建て賃貸への投資は、会社員が優遇されている投資方法と言われています。多くは金融機関から資金を借りて物件を購入します。金融機関から融資を受けやすいのは、収入が安定している会社員です。特に高年収の会社員が優遇されます。

 

金融投資と異なり、不動産という現物に投資する手法は世界情勢の変化に直接の影響を受けません。変動金利で融資を受けている場合は金利上昇によって利回りが悪化するリスクがありますが、株価が大暴落して一瞬にして資産を減らしてしまったということが起こりにくいのです。

 

金融投資、特に投資信託のようにほったらかしにはできませんが、不動産オーナーとしての作業量が決して多くないのも魅力の一つです。立地戦略、マーケティング、建物の維持、利回りの分析などやるべきことはあるものの、本業を邪魔するほどのものではありません。

 

不動産投資で稼いだ資金を金融投資に回すことも、一種のレバレッジになるでしょう。不動産オーナーとしての副業は本業の定年退職後も継続することができます。金融投資をするための副業としての不動産投資と考えてもいいかもしれません。

 

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