(※写真はイメージです/PIXTA)

契約時に聞いていた入居者と、実際の入居者が異なる。単身で住むと聞いていたのに、いつのまにか二人暮らしをしている……転貸や単身者向けの物件に複数人の入居など、賃貸経営ではよくあるシーンに法的な問題はあるのでしょうか? 本記事では、弁護士が詳しく解説します。

転貸は法的に問題あり?なし?

転貸は、賃貸人、大家さんの承諾を得ていなければ、以下の民法の条文で明確に「できない」と定められています。

 

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は契約の解除をすることができる。

 

条文で定められている通りですが、賃貸借というのは誰が借りたものを利用するかという信頼を基礎においているため、勝手に第三者に転貸することはできないという当然の決まりが定められています。

 

ただし、現実に起きる問題では、なかなか対処するのが難しいケースも多いです。具体的に情景を思い浮かべていただきたいのですが、あくまで貸している部屋のなかで日夜なにが行われているかを大家さんは把握できません。

 

そもそも転貸がなされているかどうかを把握しづらいもの。また、仮に異なる人が出入りしていたとしても、友達を招いていたとか、言い訳されるケースもあり得ます。そのため、転貸を把握して、問題のある転貸だというための証拠を集めるのが難しいといえます。

 

筆者の経験上は、実際に転貸が問題になり解除・明け渡しを求めるような事件自体が少ない印象を受けます。商業テナントで明らかに異なる事業がされているようなケースだと、法人登記や許認可等の登録の関係で発覚することもありますが、個人の住居ではなかなか転貸を突き止めるのは難しい印象です。防犯目的として廊下などに監視カメラを設置し、その映像から明らかに他人が居住しているような証拠を集めていくほかに方法はないと思います。

 

単身向けと募集をしていたのに…法的な問題点は?

「単身で住むと聞いていたのに、いつのまにか二人暮らしをしている」というケースを考えてみましょう。単身者限定という部分が契約書にも明記されているのであれば、契約違反だといえるでしょう。

 

もっとも、賃借人が誰であるかが重要な契約ではあるものの、解除するのは難しいといえます。

 

賃貸借契約は、居住権の保護という観点から、軽微な契約違反では解除を認めずに、重大な契約違反があって初めて解除できるという「信頼関係破壊の法理」という理屈が裁判例上形成されています。そのため、単身者限定の契約であるのに、同居人が増えていたとしても、転貸と異なり、本来的な賃借人が利用していますし、契約通りの賃料が払われている以上、解除し、立ち退き訴訟で勝訴するのは、よっぽどの例外事情がない限り難しいといえるでしょう。

 

 

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