高級老人ホームの自慢を散々していた義母だったが…
義母が老人ホームへの入居を決めたのは、高齢者の1人暮らしに不安を覚えたから。
――同居の話はあがらなくて、全部自分で決めてくれたのはよかった
と斎藤さん。ただ
――入居する老人ホームの自慢がすごかったですね。「新しいホームで設備が豪華」とか、「海を望めてロケーションが素敵」とか、「食事がまるで高級レストランのよう」とか。そんなの自慢されても、って感じですよね
ずいぶんと豪華なホームを選んだものだ、と半ば呆れたという斎藤さん。
――年金月16万円程度といっていた義母が、そんなホームに入居だなんて。ずいぶんと貯め込んでいたんですね
そんなやりとりも、義母がホームに入居してしまえば、ときに懐かしく感じるのではないか。そう考えていた矢先、事件が起きます。それは義母が老人ホームに入居して3ヵ月ほど経ったある日の夜のこと。きっかけは義母からの電話でした。
――義母がホームに入居して初めての電話だったので、珍しいなと思いながら出たんです。そしたら「お願い、助けて!」「お願い、迎えに来て!」とSOS。ビックリしましたよ
次の日、高速を走ること1時間。恵子さん、初めて義母が入居する老人ホームにやってきました。義母が話をしていた通り、リゾートホテルかと思うような立派な造りにロケーション。ひと目で高額の老人ホームであることがわかります。しかしホームに入ると、その印象はガラリと変わったといいます。
――なんか臭うんです。掃除の行き届いていないトイレのような。細かくみていくと汚れも目立つし……豪華な造りには似つかわしくない異様な雰囲気に思わず息を飲みました
義母の部屋に行き話を聞くと、入居当初、スタッフは経験値の低い新人が多かったが、すぐに辞めてしまい、今は明らかに人手不足。入居者のヘルプにも追いつかず、粗相をしてしまった入居者がいても、しばらく放置されることも多いといいます。そのためホームは常に「どこか臭う……」という状況に。清掃も大雑把で、細かなところまでは気が回らないようになっていたのです。
――こんな生活がしたくて、このホームを選んだわけじゃないの
混乱するホームの運営、期待はずれの高級老人ホームでの生活。義母が精神的に追い詰められていることは明らかでした。それであれば、まずは息子(夫)に相談をすれば良かったのに、と思いましたが、聞けば「そんなの今のうち。少しは我慢しなさいよ」と諭されたのだとか。救いを求めることができるのは、あとは仲が微妙な嫁だけ……という顛末だったのです。
新規オープンの老人ホームは設備は新しく、空きも多いことから、気に入った居室を選べることも。ただし想定通り入居者が集まらず運営が行き詰ることも。また「数少ないベテラン職員+大量の新人」という構図になることもしばしば。なかにはベテラン社員についていけず新人が大量離職→人手不足でサービスの質が低下、ということも。新設というメリットが、逆にデメリットとなることもあるので、老人ホーム選びは慎重に行う必要があります。
一時的に義母を連れて帰ったという斎藤さん(義実家は売却が決まり、帰ることができなかった)。義母はもう少しホームの様子を見極めて、必要であれば新しいホームへの転居も検討しているといいます。
[参考資料]