壮絶!「介護と仕事の両立」…強制的に老人ホームに入居させることを決意
そんな生活も半年、1年と続くと肉体的にも精神的にもキツくなってきます。仕事なかにも関わらず、頻繁に電話がかかってくることも多く、「職場に迷惑をかけている」と、強いストレスを感じるようになりました。
また夕方、訪問介護員とバトンタッチし、母子ふたりきりになると、そのキツさは増します。認知症が進行し、少し前のことも覚えてない、しかし昔のことは鮮明に覚えていて、やたら昔話をしてくる(昔のことを最近のことのように話す)。自分(直美さん)のことも忘れてしまっているのではないか。そんなシーンもあり、何ともいえない感情に襲われます。目を離した隙に家を出て行ってしまわないかと気が休まらず、ずっと寝不足が続いている……
――だめ、もう限界
ソーシャルワーカーとも相談したところ、直美さんのためにも施設への入居を考えたほうがいいという結論に。認知症患者を受け入れてくれる老人ホームをいくつかおすすめしてもらい、直美さんが見学。月15万円程度の母親の年金で、月額費用を賄えそうな自宅からも近いホームに入居させることを決めました。
しかし、母親は断固拒否。
――そんな姥捨て山のようなところには入りたくない
――ずっとこの家にいたい
――なんで私を見捨てるの!
そんな言葉を次から次へと直美さんに投げかけてきます。このときは母親の記憶もハッキリとしていたからでしょうか、余計に母親の言葉がぐさりと刺さったといいます。とはいえ、このままでは自分が潰れてしまう……心を鬼にして、母親を老人ホームに入居させたといいます。
老人ホームの入居に際し「本人の同意が必要なのでは?」と思う人もいるでしょう。しかし認知症では意思表示は難しく、必ずしも本人の同意が必要とは限りません。もちろん無理やりの入居は本人にも大きなストレスにもなりますし、本人の同意があれば入居もスムーズ。できれば、元気なうちに本人の意向を聞いておくのがベストです。
母が老人ホームに入居し、肉体的にラクになったと直美さん。しかし別の意味で精神的にしんどいといいます。
――母はひとりでも私を育ててくれた。なのに私は……親不孝者です
母親の介護を諦めたという後悔の念。いつまで経っても拭うことができないといいます。老人ホームのスタッフもプロなので、強制的な入居であっても十分に配慮し、不安や戸惑いを払拭してくれます。「あんなに嫌がったのに、楽しそうにしている……」ということは珍しくなく、いつか、直美さんの後悔も消えるかもしれません。
[参考資料]