投資は自己責任だが…なかには人の責任にする人も
鈴木さんのように、金融機関に勧められて50代、60代になってから投資デビュー、というケースは昔から多いもの。老後を前に「お金、足りるかな……」と不安に思う気持ちも強いのでしょう。さらに「もう少しお金が増えれば」という気持ちも。そんなときに金融機関から「投資しませんか」「運用してお金を増やしましょう」といわれたら、何も考えずに提案にのってしまうわけです。
金融広報中央委員会『令和5年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』によると、金融資産保有率は、「50代」で72.6%、「60代」で79.0%、「70代」で80.8%。
金融保有世帯における金融資産保有額は「50代」が1,611万円、「60代」が2,588万円、「70代」が2,188万円。その内訳をみていくと、圧倒的に預貯金が多く、生命保険、株式、投資信託が続きます。
【50代以上「種類別金融資産保有状況」】
◆預貯金
50代…663万円、60代…1,130万円、70代…964万円
(うち定期性預貯金)
50代…309万円、60代…559万円、70代…556万円
◆金銭信託
50代…22万円、60代…16万円、70代…31万円
◆生命保険
50代…224万円、60代…264万円、70代…248万円
◆損害保険
50代…28万円、60代…43万円、70代…34万円
◆個人年金保険
50代…128万円、60代…184万円、70代…92万円
◆債券
50代…39万円、60代…123万円、70代…137万円
◆株式
50代…257万円、60代…520万円、70代…459万円
◆投資信託
50代…134万円、60代…243万円、70代…190万円
◆財形貯蓄
50代…94万円、60代…26万円、70代…5万円
◆その他金融商品
50代…22万円、60代…40万円、70代…27万円
金融商品を選ぶ際の基準としては、50代では「収益性」がトップで35.3%ですが、60代では「安全性」がトップとなり36.3%。それでも投資である以上、場合によっては損失を被ることも当たり前。実際に「元本割れの経験ある」のは50代で30.2%に対し、60代では41.2%、70代では46.7%と、安全志向のはずが、50代以上よりも60代以上のほうが元本割れの経験をしています。
さらに元本割れに対しては、自己責任と考えている人がほとんどですが、知識不足と捉えている人が2割弱、さらには金融機関に責任があるとする人も。
【元本割れの経験の受け止め方】
◆自分の相場についての予想が外れたのであるから仕方がない
50代…71.8%、60…代74.1%、70代…70.9%
◆自分が元本割れするリスクをよく理解していなかったのであるから仕方がない
50代…18.1%、60代…15.9%、70代…17.6%
◆相場の変動によって元本割れするリスクを金融機関が十分に説明しなかったためだ
50代…4.5%、60代…4.8%、70代…5.7%
◆著しい誤解を招く広告、勧誘を金融機関から受けたためだ
50代…5.5%、60代…5.2%、70代…5.7%
世界の先進国のなかでも金融リテラシーが低いとされる日本人。さらに金融機関への信頼感も加わり、銀行が勧めてくれる商品だから」という理由だけで金融商品を購入し、思わぬ損を被る人は多いようです。
金融機関もビジネスである以上、売り手が儲かる商品を勧めます。そのなかには「毎月分配型の投資信託」や「仕組み債」、「外貨建て保険」など、高額でハイリスクであったり、複雑な仕組みの商品も多く、勧められるがままに投資デビューすると大やけどすることも珍しくはありません。
親切に相談にのってくれる行員も多いですが、それだけにとどまらず、しっかりと資産運用について勉強することが重要。「銀行が勧めてくれたから」にのっかるだけの資産運用はうまくいかない、と考えておいたほうが身のためです。
[参考資料]