投資以上に大切な「人生の資産」とは

老後資金ということであれば、65歳から投資を始めても平均寿命までの約20年間の長期投資にはなります。しかし、85歳になって資産を持っていても一体何になるのかという考え方も一方にはあります。

太郎さんは、この経験を通じて投資の本質について深く考えるようになりました。「お金の不安はあったが、暮らしていけないほどではなかった。本当に投資という手段がベストだったのか?」「自分に本当に必要なものは何か?」

投資は老後の生活を支える手段の一つに過ぎません。老後資金の不安に対する手立てということであれば、年金の繰り下げを行ったり、長く働いたりといった別の方法もあります。

確かに、お金は重要です。しかし、それ以上に大切なのは、安心して充実した人生を送ることではないでしょうか。太郎さんは、投資以外の「資産」にも目を向け始めました。健康、家族や友人との絆、趣味や社会貢献活動など、お金では買えない価値あるものがたくさんあります。

長期投資の真髄は、単にお金を増やすことではなく、将来の自分により多くの選択肢を用意することです。そのためには、金融資産だけでなく、人生全体のバランスを考えることが重要です。

65歳からの賢明な選択:焦らず着実に築く幸せな老後への道筋

太郎さんは、この経験から多くのことを学びました。

1.新NISAでは、売却した商品の非課税枠は翌年以降にしか再利用できない。
2.投機と投資の違いを理解することの重要性。
3.投資は長期的な視点で行い、短期的な市場の変動に対して冷静に対応し、パニック売りを避けること。
4.過去の成績が未来の成績を保証するわけではない。
5.円高や市場の変動に対するリスクを十分に認識・対応すること。
6.SNSやインフルエンサーの言葉に惑わされないこと。
7.投資は人生の一部であり、充実した人生を送るための手段として投資を位置づけること。

健康や人間関係など他の「資産」も大切にすること。投資は確かに老後の資金を増やす可能性を秘めていますが、同時にリスクも伴います。大切なのは、自分の状況をよく理解し、無理のない範囲で始めることです。また、投資は人生の一部に過ぎません。

真に豊かな老後を実現するためには、金融資産だけでなく、健康や人間関係など、総合的な「人生の資産」を築いていくことが重要です。

太郎さんは、反省をしながら学んでいくなかで、投資の神様ウォーレン・バフェットの「潮が引いたら誰が裸で泳いでいたかわかる」という言葉に感銘を受けました。

相場が高騰している(潮が満ちている)ときは、大半の人が儲けているので正しい運用をしているように見えるもの。一転、ひとたび相場が悪くなる(潮が引く)と、投機を投資と混同した運用実態が浮かびあがってくるのです。

リターンが出ているときこそ、「今、自分は裸で泳いでいないか」を客観視することが大事だと太郎さんは学びました。65歳からでも、賢明な選択と適切な情報を得ることで、充実した老後を迎えることができます。焦らず、着実に、自分なりの幸せな未来を築いていきましょう。

青山 創星
ファイナンシャル・プランナー